ウーブン・シティ連携の裾野市も断念! IT活用「スマートシティ」はなぜ今も広まらないのか
先が見えないスマートシティ

JETROのイメージ図を見ると、スマートシティは
・ソフトウエア中心のデジタル化分野
・物理的なインフラも必要な電力、建物、交通のスマート化分野
に大別される。
前者を対象にするのが、内閣官房が提案したデジタル田園都市国家構想であり、後者を対象に、内閣府は51地域で54のスマートシティ関連事業を選定し、総務省、経済産業省、国土交通省と協力して推進中だ。
国内外のスマートシティは企画~立ち上げ段階から、実装段階に移行しつつあり、その過程で
・住民と参加企業の思惑をどう一致させるか?
・費用対効果の明確化
・産官民連携システムの構築
の3点が成功のためのカギとして摘出され、総務省も自治体向けハンドブックの中で「小さく始めて、大きく育てる」ことを推奨している。
神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンもパナソニック工場跡地の再開発が発端となっている。人間の生活スタイルや嗜好は千差万別で、それらをひとつの型にはめることは、全住民の幸福にはつながらない。
また、バッテリー電気自動車の展開遅れと同様に、スマートシティの海外に対する遅れを指摘する報道があるが、「バスに乗り遅れるな」とあおられて強引に進めると、失敗の可能性が高まるだけのため、急ぐ必要はない。
日本社会への親和性吟味を

国や自治体は、「聞く力」だけではなく「語る力」を発揮して、住民への啓発を進める一方、海外の動向を高みから見物(情報収集)し、成功モデルが出現すれば、その陰に隠れた背反と、日本社会への親和性をしっかり吟味したうえ、良ければ後を追えばよい。
現在の流れは、
・先駆者利益を得る
・追従者となって失敗のリスクを低減する
の選択となっているが、そもそもスマートシティの住人に大きな先駆者利益があるのだろうか。逆に、日本政府はスマートシティ推進体制を活用して、ASEAN諸国など、海外のスマートシティ構想支援を最大限に加速する必要がある。ここには間違いなく先駆者利益が待っているからだ。
スマートシティは広がらないのではなく、構想が良ければ「自然に広がる」のだ。