ウーブン・シティ連携の裾野市も断念! IT活用「スマートシティ」はなぜ今も広まらないのか

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トヨタ自動車が建設中のウーブン・シティをはじめ、現在、スマートシティへの注目が集まっている。その一方、順調に広がっているとは言い難い。その背景には一体何があるのか。

デジタル田園都市国家構想とは何か

実証試験を実施した神戸ポートアイランドに設置した水素熱電供給実証プラント(画像:産業技術総合開発機構)
実証試験を実施した神戸ポートアイランドに設置した水素熱電供給実証プラント(画像:産業技術総合開発機構)

 では、日本政府はこの課題にどう取り組もうとしているのか。

 2022年6月、内閣官房からデジタル田園都市国家構想基本方針(案)が発行され、5.7兆円の予算が確保された。基本方針は「地方の社会課題を解決するための鍵である、デジタルインフラを急速に整備し、官民双方で地方におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進」することだ。具体事例の紹介はあるものの、実装計画や工程表は存在しない。

 更に、デジタル化と生産性向上促進を目的とする人への投資として1兆円規模のリスキリング(再教育)政策も打ち出した。ただ、こちらも具体的な実行計画はまだない。なおリスキリングは、エンジンから電気モーターへの移行に対応するために、欧州の自動車業界を中心に世界各国ですでに実施されている。

 米国は2015年、交通渋滞、犯罪を削減し、地域経済を活性化し、都市の改善に取り組む地域社会を支援するために、環境・交通・物流と健康の3分野に16億ドルの連邦政府予算と、IT化やモノのインターネット(IoT)化など、25の新技術を投入するスマートシティ・イニシアチブ(構想)を発行した。

 2020年、ニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンDCなどの大都市から、カロライナ州シャーロットやコロラド州ボルダーなどの地方都市まで多くの都市で取り組みが進んでおり、自動運転など、モビリティー関連の取り組みを行っている都市もある。欧州では、アムステルダムやエストニアなど、アジアでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国など、中国では杭州、雄安新区などで進んでおり、インドでは政府が「スマート100都市構想」を発表した。

 このなかで、民間企業だけが推進している都市はヘルシンキとトロントだけで、他は国または地方自治体が参画している。

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