開発難航の「三菱スペースジェット」 カリスマなき体制で、日の丸の翼は消えゆくのか

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開発が難航している三菱スペースジェット。日本の航空機製造産業は復活できるのか。

MSJの可能性

航空機の運航形態(画像:吉井たくや)
航空機の運航形態(画像:吉井たくや)

 リージョナルジェットは、今後20年間での需要が5000機以上と見込まれている。リージョナルジェット市場の可能性、また日本の航空機製造産業の活性化という意味でも、MSJの果たす役割は大きい。

 MSJは新型エンジンと先進空力技術によって、燃費を従来機より20%以上削減しており、完成すれば競争力のある機体となる。

 リージョナルジェットの分野では、長らくボンバルディアとエンブラエルの2強体制が続いてきた。だが2020年6月、三菱重工がボンバルディア社からリージョナルジェットの保守・サービス事業を買収したことで、ライバルは実質的にエンブラエル1社のみとなった。これはMSJにとって追い風といえるだろう。

 受注状況も好調だ。ローンチカスタマー(完成した機体が最初に納入されるエアライン)であるANAを始め、米国の航空会社を中心に総受注数は2020年2月時点で285機となっている。

開発の現状とは

MSJに搭載されるエンジンPW1200G(画像:三菱重工業)
MSJに搭載されるエンジンPW1200G(画像:三菱重工業)

 そんな有望株であるMSJだが、開発は難航している。

 三菱重工は2021年中期経営計画のなかで、完成機事業の継続的な取組を推進するとしながらも、MSJ開発については開発状況と市場環境を踏まえ

「いったん立ち止まる」

としている。事実上の開発凍結といっていいだろう。

 主な要因は、

・開発費の膨張(当初見込み1800億円。現在1兆円)
・新型コロナによる航空機需要の低迷

だ。

 繰り返される設計変更、型式証明の取得が難航しているため、巨額の開発費が必要となった。開発費は2021年からの3年間で200億円まで圧縮する。直近の3年間は3700億円だったため、95%減となる。現状、型式証明の取得作業は進めている。

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