ローカル線を再活用? 三重県・四日市で注目の「歩行者優先まちづくり」、地方都市の郊外化を止められるか
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300を突破した推進都市

政府が旗を振ったこともあって、ウォーカブルシティ推進都市は2022年6月末で300を突破した。数の上ではウォーカブルシティを掲げている自治体は増えているものの、それは「バスに乗り遅れるな」とばかりに、取り組んでいるからにほかならない。
しかもウォーカブル推進都市の多くは、東京・大阪といった大都市。前述したように、鉄道・バスといった交通インフラが整備されているから自動車に依存しなくても生活が成り立つ環境が整っているにすぎない。つまり、現状においてウォーカブルシティは
「大都市目線の理想論」
でしかない。
まだ課題が多く、地方での機運が高まっているとは言い難いウォーカブルシティだが、ここにきて地方都市からも推進事例が出てきている。それが、三重県四日市市だ。
叶わなかったLRT計画

三重県北部に位置する四日市市の人口は約30万人であり、決して大都市とは言えない。四日市市は近畿日本鉄道(近鉄)の四日市駅が市街地の中心となっているが、JR四日市駅が約1.2km離れた場所に所在している。近鉄・JR両駅間にバスが運行されているものの、両駅間の移動需要はほとんどない。両駅間を結ぶ道路沿いに商店が並び、人出でにぎわうこともない。
四日市市は重工業都市として発展した歴史を有するため、昭和30年代から50年代までは港に近い国鉄四日市駅側がにぎわっていた。時代とともに中心軸は近鉄側へとシフトし、現在はほかの地方都市と同様に郊外に大きなショッピングモールが立地。にぎわいは郊外へと移りつつある。
とはいえ、近鉄の四日市駅周辺にはまだ飲食店などが頑張っている。そうした状況から、四日市は近鉄・JR両駅間に歩行者空間や人が集まるような空間を整備し、ウォーカブルシティを目指すとしている。
四日市市は、近鉄とJR両駅間を結ぶ交通機関として次世代型路面電車(LRT)を計画したことがあった。両駅を路面電車で結んで人の行き来を生み出せば、地域活性化につながることが理由だが、建設費用面からLRT計画は棚上げされた。鉄道と道路という交通インフラを比較した場合、鉄道の方が定時性や輸送力、街の活性化への貢献度などで優れている。
他方で、線路などは鉄道事業者しか使用できない。道路は歩行者・自動車など多くの人が利用できるので、鉄道需要が低い地方都市は道路の方が経済効率で勝る。だから、どんどん自動車に依存した社会構造になり、それが街を郊外化させる。
四日市市が描いたLRTは中心市街地の再生を託した計画だが、採算面で折り合わなかった。だからといって、四日市が公共交通に無理解な自治体というわけではない。