自動車業界に長く勤めた私が「自動運転の車」に断じて乗りたくない3つの理由

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近年、加速度的に進化を遂げる自動運転技術。しかし、自動車業界に長年従事してきた筆者は自動運転車に乗りたくないという。いったいなぜか。

航空機の四つの事故から学ぶこと

ボーイング777の計器盤(画像:NTSB調査報告書)
ボーイング777の計器盤(画像:NTSB調査報告書)

 自動運転は事故を大幅に削減するが、新たな原因の事故も発生する。そのリスクを減らすためには、「160億km程度の実走行が必要」との試算がある。

・カメラとセンサーの認識精度
・制御理論の妥当性
・システムの完成度

を検証しなければならないのだ。だが、特定の人間が特定のルートを走行するだけでは、すべての要因を網羅することはできない。

 自動運転の落とし穴については、自動操縦に起因する航空事故を参考すべきだろう。次の4件である。

 第1は、パイロットと自動操縦システムの主導権争いだ。1994(平成6)年、中華航空のエアバスが名古屋空港の着陸に失敗して墜落した。副操縦士の操作ミスを発端に、人とシステムとの主導権争いが生じ、最悪の結果に至った。当時のエアバスはシステム中心の設計思想を持ち、人間への情報提供が不足。自動操縦の中断が簡単ではなかった。

 第2は、人間は複数の物事に意識を集中できないことだ。1972(昭和47)年、イースタン航空のトライスターがマイアミ空港着陸前に湿地帯に墜落した。前脚がロックされたことを示す表示灯が点灯しなかったため、着陸を中断し、自動操縦で空港付近を旋回。前脚の状態を確認中に、機長が意図せず操縦かんを押したことで自動操縦が解除され、緩やかな降下が始まったが、そのことに誰も気づかずそのまま湿地帯に墜落した。

 第3は、システム依存により人間の対応能力が衰えることだ。2009年、エールフランスのエアバスが太平洋上空を巡航中に失速し、墜落した。機長が休憩中に経験の浅いふたりの副操縦士が自動操縦で巡航していた。このとき、速度を測定するピトー管の片方が凍結し、ふたつの速度計の指示が不一致となったため、自動操縦が解除された。これは想定された不具合で対応訓練も行われていたが、副操縦士のひとりが操作を誤り、失速した。失速警報が鳴ったが意味を理解できず、副操縦士間の連携にも問題があったため、最悪の結果に至った。

 米国運輸安全委員会(NTSB)は、2013年にサンフランシスコ空港で発生したアシアナ航空ボーイング777の着陸失敗事故も操縦士の人為的なミスが原因と断定している。自動操縦への依存が、パイロットの手動操縦能力や異常事態への対応力を衰えさせた可能性がある。なお、アシアナ航空は巡航中の手動操縦を禁止している。

 第4は、制御ソフトがブラックボックスであることだ。ボーイング737の進化版である737Maxには、エンジンの大型化による操縦特性の変化を自動補正するMCASシステムが装備されていたが、当局にも航空会社にも全く説明していなかった。その結果、2018年と2019年に相次いで墜落事故を起こした。

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