三陸沿岸道路は250km以上、トイレなし! 「経済復興」の名のもとに利用者を下道に降ろすのはやり過ぎだ
仙台市から八戸市までを結ぶ「三陸沿岸道路」。そんな三陸沿岸道路は333kmの無料区間を有している一方、255kmの区間でトイレが存在しないのだ。
トイレは生活上欠かせないもの

ふたつ目の理由は、三陸沿岸道路が帯びている使命にある。前項の通り、三陸沿岸道路は復興道路として、三陸沿岸地域を震災前以上に災害に対して強くする使命を帯びている。災害時に困窮するもののひとつがトイレであり、それが災害時のライフラインとなる三陸沿岸道路上に、255kmに渡って設置されていないというのは危機管理の観点から考えると問題だ。
トイレというのは、人々が生活する上で欠かせないものだ。地域活性化のためとは言え、そのトイレを“人質”に取り、半ば強引に三陸沿岸道路から利用者を降ろすというのは、少々やり過ぎではないか。本当は、三陸沿岸道路上にさらに多くのトイレ付きPAを設置してほしいところだが、せめて現在整備済みの駐車場のみのPAにはトイレを設置すべきだ。
また、利用者を強引に道の駅に誘導しても、トイレ目的の利用者はトイレしか利用しない。基本的に道の駅の最寄りIC付近には三陸沿岸道路本線上に道の駅の案内板が掲載されているのだから、食事がしたい人や地元の物産やお土産を購入したい人は黙っていても道の駅にやって来る。PAにトイレを設置すると沿線地域が活性化されないと決めつけるのは早計だろう。
悲願の全線開通を果たした三陸沿岸道路だが、全線開通自体は三陸沿岸道路の完成ではない。目先の利益だけにとらわれず、三陸沿岸道路が本来帯びている災害時の使命と平時の使命、双方の要素をバランスよく考え、これからも試行錯誤していかなければならない。そして、双方の要素のバランスが取れた時、初めて三陸沿岸道路は完成する。