三陸沿岸道路は250km以上、トイレなし! 「経済復興」の名のもとに利用者を下道に降ろすのはやり過ぎだ

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仙台市から八戸市までを結ぶ「三陸沿岸道路」。そんな三陸沿岸道路は333kmの無料区間を有している一方、255kmの区間でトイレが存在しないのだ。

復興道路が目指した姿

復興道路・復興支援道路情報のウェブサイト(画像:国土交通省)
復興道路・復興支援道路情報のウェブサイト(画像:国土交通省)

 復興道路――。何からの“復興”なのかは、改めて言うまでもないだろう。

 2011(平成23)年3月11日。日本中を震撼(しんかん)させたあの東日本大震災だ。この地震による巨大な津波が三陸沿岸の街々を次々と壊滅させ、今なお多くの爪痕を残している。

 そんな三陸沿岸の街々の復興に貢献することが復興道路の使命だが、ここで言う復興とは、単純に震災前の状態に戻すことを指しているわけではない。三陸沿岸地域を震災前以上に災害時に強く、日常生活・ビジネス・レジャー問わず、平時におけるさまざまな分野において、更なる発展をすることが真の目的なのだ(参考:災害に強く、新たなまちを支える復興道路・復興支援道路(国土交通省東北地方整備局))。

 そして特に、この平時における目的を達成するためには、この復興道路をより多くの人々に、より頻繁に利用してもらわなければならない。

 より多くの人が、より頻繁に利用したいと思う道路とは何か。それは

・便利
・高規格
・無料

の道路だ。

 通行料を無料にすることは、単に利用者が得をするというだけではない。料金所の設置が必要ないため、各ICの構造を簡素化することができるのだ。このため、建設費自体が安上がりになり、かつ建設時間の短縮を図れる。

 加えて、簡素化されたICの建設に必要な土地は、従来の有料道路と比較して少なく済む。そのため、沿線地域のニーズに合わせて細かくICを設置することができ、その分沿線地域の物流や人流の小回りが利きやすくなる。さらに、復興道路自体が通行料無料なので、その傾向に拍車がかかるという好循環が実現するのだ。

 もちろん、欠点もある。通行料無料の自動車専用道路の建設費を、誰が負担するのかという問題だ。答えは皆さんお気づきだろうが、税金だ。

 ただ、この目的の達成は、三陸沿岸地域にとっては言わずもがな、関係各県、そして国にとっても悲願だった。すなわち、復興道路は重要な国家プロジェクトとして位置づけられているため、復興道路の建設費は必要経費として税金が投入された。

 そのおかげで、東日本大震災前に開通済みであった一部有料区間を除き、「復興道路」の別名を冠した三陸沿岸道路はその大部分が通行料無料で開通。その結果、333kmという前代未聞の無料区間が誕生したのだ。

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