空飛ぶクルマと同じくらい重要なのが「空の道路」だ! 開通に不可欠な運航管理システムを解説する
高まる空飛ぶクルマへの期待
手元の検索エンジンに「空飛ぶクルマ」と打ち込むと、検索予測に「値段」「実用化 いつ」などのキーワードが並ぶ。大阪府が2025年の大阪万博開催時、一般向けの空飛ぶクルマの遊覧飛行を目指しているため、社会実装がこの数年で現実味を帯びてきた。
実際、大阪府は2023年2月に空飛ぶクルマの有人実証飛行を行うことを発表したばかりだ。これまでもメディアの前では無人のテストフライトが行われてきたが、有人飛行は国内初。米リフト・エアクラフト社製のひとり乗りの機体を使い、大阪城公園の敷地内で離着陸や昇降時の動作を確認するとしている。
このように、機体開発そのものについ目が行きがちだが、その裏で「空の道路」開通に向けたさまざまな実証実験が行われていることを、皆さんはご存じだろうか。
実現に不可欠な運航管理システム
空飛ぶクルマが空を縦横無尽に飛び回る世界を実現するには、機体の安全性だけでなく、地上から安全かつ効率的に、機体を管理するシステムの構築も不可欠だ。
ヘリコプターや飛行機などの有人機の運航管理では、管制官と航空機のパイロットは音声による無線通信でやり取りを行い、管制官どうしはホワイトボードなどを使って情報を共有している。任務の付与などの運航管理が人間の判断で行われているため、多くの機体が一堂に会した場合、迅速な対応が困難になる可能性がある。
実際、2011(平成23)年3月の東日本大震災では、300機以上ものヘリコプターが現場に集結した際、任務の割り当て待ちの時間が長期化したり、多くの機体が同時に通話を行ったりしたため、混信が生じるなどの問題が発生した。
また、前述のように、ヘリコプターなどの有人機は管制システムが整備されており、航空当局により飛行情報の管理が行われているが、ドローンは2022年にようやく機体登録制度が開始されたところだ。さらに、「飛行情報登録システム(FISS)」により飛行情報の共有が行われているが、全てのドローンの情報登録が義務化されているわけではない。
したがって、多くのエアモビリティが空を行き来する未来を想定した際に、安全な運航管理はひとつの課題だった。そこで2022年2月、「大阪府空飛ぶクルマ社会実装推進事業」に参加している企業が結成したコンソーシアムによって、この問題を解決する足掛かりとなる実証実験が行われた。