鉄道の未来は貨物にある! JR九州初代社長が道内「北方4線」を国策維持すべきと力説するワケ
北方4線は「維持すべき」
北海道の「北方4線」と呼ばれる宗谷本線、石北本線、石勝線・根室本線、釧網本線は、いずれも人口密度が低い地域を走っており赤字になっているが、著者は
「国策的にも維持すべき路線」
だと考えている。
そのために北海道新幹線を旭川まで延伸した上で、北方4線を新幹線と同じ標準軌に改軌することを提案している。これによって、北海道で生産された食料などを貨物でそのまま東京などの都市部に運ぶことができるようになる。さらに、北米(大圏コース)とヨーロッパ(北極海ルート)への最短ルートとして、釧路港をハブ港湾に整備することも提唱している。
新幹線を使った物流としては、貨物専用の新幹線車両を新造してコンテナを積み込む「コンテナ新幹線方式」と、新幹線の車内に手押搬送具を積み込む「新幹線宅配便 = ロール・ジット・ボックス方式」が考えられるが、著者が本命と考えているのは前者だ。
このような新幹線物流と、ハブ空港、ハブ港湾を組み合わせることで、アジアのサプライチェーンの拠点をつくっていくというのが著者のビジョンである。
新幹線貨物の採算性について本書は詳しく検討しているわけではないが、政府が2050年までに実現すると掲げているカーボンニュートラルのために、国費を投入して貨物のトラックから鉄道へのシフトを進めるということも考えられるし、ウクライナ戦争以降、にわかに表面化したロシアの脅威を考えると、安全保障の面から北海道の鉄道貨物を強化するという考えもありだろう。
本書は、冒頭にも述べたように国鉄の歴史を内部で体験した人物がたどった本であり、鉄道マニアにとって興味深い話が詰まっているが、ここで紹介した新幹線貨物の構想をはじめ、必ずしも鉄道マニアではない人にとっても興味深いトピックがちりばめられており、楽しめるものとなっている。