鉄道会社の「高架下ビジネス」はなぜ活発化したのか? 敷地の狭さから垣間見えた、既存スキームの限界

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近年、鉄道の高架下開発が盛んだ。その背景には一体何があるのか。

変化した商業開発のパラダイム

ジェイアール東日本都市開発が開発した「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(画像:ジェイアール東日本都市開発)
ジェイアール東日本都市開発が開発した「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(画像:ジェイアール東日本都市開発)

 従来の商業開発において、「規模」「距離」は重要なファクターだった。規模とは商業床面積の規模で、大規模な施設ほど競争力があるとされた。距離は、本来は競合施設との距離を指すが、わが国では大量集客のためには交通ターミナルからの距離の近い方が有利とされた。

 つまり、

・大型ターミナルの駅前
・高速道路のインターチェンジ近くの大型施設

が有利とされてきた訳だ。

 高架下は敷地の幅も狭く高層化できないため、施設規模を確保することができず、駅前からも離れて、商業開発の優位性は低かった。それにもかかわらず高架下開発が活発化したのは、

・鉄道の高架事業が推進された(沿線住民の安全性や道路の渋滞回避)
・建て替えが必要となった(耐震)
・高度な土地有効活用の推進が急務だった(鉄道事業者の将来的な事業安定化)

ことなどがあげられるものの、大きなバックグラウンドとして商業施設開発の既存スキームに限界が感じられはじめており、デベロッパーが新たな開発スキームの模索に迫られていたことがあげられる。

 大型施設の大量集客のためには全国的な知名度や、多くの人が好む安定したクオリティーのあるテナントが必要だ。さらに膨大な商業床を埋めるためには、床負担力があり、多店舗展開して信頼性があるテナントが望まれ、大手ナショナルチェーンがその受け皿となっていった。

新たな都市開発に則した高架下開発

川口ハイウェイオアシス(画像:写真AC)
川口ハイウェイオアシス(画像:写真AC)

 しかし、近年は主力のアパレルなどナショナルチェーンの業績も低迷し、テナントがなかなか埋まらない状況が続いている。さらに本格的なオンライン社会の到来によってリアル店舗に足を運んでもらうためにはより高い目的性が必要となっている。ナショナルチェーンの最大公約数的な価値観では利用の目的性は低いと言え、それは新型コロナウイルスの感染拡大によって、より表面化したと言える。

 現在、都市部においては個性的な低層雑居ビルが若い世代を中心に人気を得ている。小規模な開発で独自の世界観を構築し、導入される店舗は単独店か少数展開しているものが多い。世界観や趣旨に共感する目的性の高いファンを集客している。

 高架下開発はまさに低層階の小規模な開発であり、駅前から離れる立地への集客のために希少性のあるクリエイターの店舗や個性的な専門店・飲食店など目的性の高い店舗を多く導入し、結果的に新しい都市開発の流れに則したものとなっている。

 近年は高架下開発だけでなく、高速道路のサービスエリア・パーキングエリア、旅客ターミナルなど、交通事業者の取り組みによって従来の商業立地以外での新たな開発が推進されている。今年前半も高速道路のハイウェイオアシスの開発が大きな話題となった。

 既存デベロッパーと異なる発想が期待され、今後の動向が注目される。興味のある人は高架下施設に足を運んでみてはどうだろうか。

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