村田兆治の羽田逮捕で浮かび上がった「保安検査の闇」 職員の劣悪待遇と国防観点から、今すぐ在り方を見直せ

キーワード :
, ,
ロッテオリオンズで活躍した元プロ野球選手の村田兆治が、羽田空港の保安検査場で女性保安検査員に暴行を加えたとして、現行犯逮捕された。しかし村田を責めるだけでは物事は何も解決しない。

保安検査に投資しない航空会社

保安検査場のイメージ(画像:写真AC)
保安検査場のイメージ(画像:写真AC)

 乗客にしてみれば、保安検査は得てして

「余計で、面倒なもの」

でしかない。

 安全維持のためという意義は理解できても、実際、脅威が目の前に迫っているわけではないため、

・搭乗時間が迫っているとき
・保安検査に長蛇の列が形成できているとき

には、正直なところ

「勘弁してほしい」

と感じても不思議ではない。しかし万が一、航空機の機内に銃器や刃物が持ち込まれ、ハイジャックが行われれば命の危機にさらされるのは乗客自身なのだ。

 特に近年、自爆テロの脅威が全世界に広がっている。日本もその例外ではない。2025年には大阪万博が開催される。そうでなくとも、「日本は安全」という国際的イメージもある。

 そんな状況下で、テロリストが日本を舞台に暴力をふるうのは、他国の場合より存在感を示せる。テロの脅威は日本にも身近に迫っているのだ。

 ただ、日本の保安業務をめぐる環境は前述の法改正によって一定の改善がなされたとは言え、いまだ厳しい。保安検査を担当する職員の労働環境は極めて過酷で、離職率も高い。彼らは航空安全に最善を尽くしているにもかかわらず、それが報われない環境にある。

 その要因のひとつは、航空会社が保安検査にかかわる経費を負担していることにある。この問題は、コロナ禍でより鮮明になった。航空会社は営利企業であり、コストを少しでも切り詰めようとすることは当然だ。ましてや、近年の厳しい生存競争のなかではなおさらだろう。そこにコロナ禍が加わった。

 航空会社は保安検査が航行の安全性を保つために必要であると「理念」では理解しているが、積極的な投資に至らないのが現状だ。そのため、保安検査に従事する人たちの待遇は満たされておらず、乗客からは罵詈(ばり)雑言を浴びせられることが多い。その結果、離職率が高まり、職員の経験値も上がらないという問題が生じている。

全てのコメントを見る