断固ローカル線維持を訴えても 「公的支援の拡大」に及び腰な地方自治体の悲しき現実

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赤字ローカル線の維持に、沿線地方自治体の公的支援拡大は避けられないが、自治体側に対応は鈍い。なぜだろうか。

相次ぐローカル線廃止

阿波海南駅で発車を待つJR牟岐線の列車(画像:高田泰)
阿波海南駅で発車を待つJR牟岐線の列車(画像:高田泰)

 稲刈りを終えた水田の傍らにある徳島県海陽町四方原のJR阿波海南駅。9月上旬の平日昼すぎ、徳島行き1両編成のワンマン列車が発車時刻を迎えたが、乗客はふたりしかいない。まるで空気を運んでいるような状況で列車が動き始めた。

 阿波海南駅は徳島県の県庁所在地・徳島市と海陽町を結ぶ牟岐(むぎ)線の終着駅。普通列車が1日8往復するが、通学の高校生が乗車する時間を除けば、おおむねこんな状況だ。JR四国がまとめた牟岐~阿波海南間の輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)は2021年度で146人。沿線の人口減少で1989(昭和64/平成元)年度の3割強まで落ち込み、四国で最も少ない。

 経営が厳しいローカル線のあり方を検討してきた国土交通省の有識者会議は7月、バス転換を含めた運行見直しの協議に入る基準として輸送密度「1000人未満」を打ち出した。牟岐線の牟岐~阿波海南間は、真っ先に対象となりそうな区間だ。

 国交省によると、2000(平成12)年度から2020年度までに全国で45路線、1157.9kmの鉄道が廃止された。JR北海道の札沼線・北海道医療大学~新十津川間、JR西日本の三江線など、そのほとんどは人口減少が著しい過疎地を走っていた。

減り続ける日本の人口

総人口の推移(画像:国立社会保障・人口問題研究所)
総人口の推移(画像:国立社会保障・人口問題研究所)

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の人口は今後も減り続け、2030年以降全都道府県で減少に転じる見通し。2045年には全国市区町村の7割以上が2015年に比べ、2割以上の人口減少に陥ると予測されている。このままではローカル線の赤字がさらに拡大しそうだ。

 鉄道の廃止が沿線の人口や所得水準にどのような直接的影響を与えるかについては、学術論文で意見がわかれているが、鉄道の廃止で地域が寂れたとする悲痛な住民の声は、全国で上がっている。

 牟岐線のような赤字ローカル線の運行継続は、もはや鉄道事業者の努力だけでは難しい。その方策のひとつとして考えられているのが、線路など鉄道インフラの維持管理を自治体が受け持ち、鉄道会社が運行に専念する上下分離方式だ。

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