非エンジニアの個人事業主が40歳を目前に「AI運転支援システム」の開発に目覚めたワケ

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モビリティ分野のスタートアップ企業トップにインタビューするシリーズ企画。第4回目は、AIドライバーアシスタントの開発や交通データの収集と解析を手掛けるPyreneeの三野龍太代表取締役CEO。

プレ発売は2023年末を予定

CEOの三野龍太氏(右)とCTOの水野剛氏(画像:Pyrenee)
CEOの三野龍太氏(右)とCTOの水野剛氏(画像:Pyrenee)

 起業が当たり前になりつつある現代、急成長を図るスタートアップ企業に再びフォーカスが当てられている。経済産業省は2022年6月、「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」を取りまとめ、徹底支援に取り組んでいく姿勢を明確にした。

 さまざまな業界でスタートアップ企業の動向が注目される中、モビリティ分野でも数々の企業が活躍し始めている。本連載では、モビリティに主軸を置くスタートアップの成長ストーリーを、業界の動向とともにお伝えする。

 第4回はAIドライバーアシスタントの開発、生産、販売、交通データの収集と解析を手掛けるPyrenee(ピレニー、東京都中央区)代表取締役 最高経営責任者(CEO)の三野龍太氏に話を聞いた。

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 警察庁の発表によると、2021年1月から12月までの交通事故死者数は2636人で、2020年より203人減少し、統計開始以来最少となった。交通事故の原因はさまざまだが、「気づかなかった」という当事者も多い。そうした「防げたはず」の事故を減らすための事業に取り組んでいるのがPyreneeだ。

 Pyreneeは2016年1月、代表取締役CEOの三野(みの)龍太によって設立された。おもな事業内容は人工知能(AI)ドライバーアシスタントの開発と生産、販売、交通データの収集、解析だ。現在までに調達した金額は4億円、数々の展示会への参加や、ピッチイベントに入賞している。

 Pyreneeが開発に取り組んでいるのが、AIドライバーアシスタントの「Pyrenee Drive」だ。Pyrenee Driveは自家用車、業務用トラックを問わず、設置スペースがあればどんな自動車にも取り付けられる。

 ダッシュボードの上に固定し、シガーソケットから電源を取る。先進運転支援システムとして、ドライバーの認識能力をサポートし、

・歩行者/自転車の発見遅れ
・人の飛び出しなどのとっさの判断
・車線逸脱などの誤ったステアリング操作

をアラートで伝える。本体には液晶型タッチパネルディスプレー、スピーカー、車体の前方を認識する外向きカメラ、ドライバーの挙動を検知する内向きカメラが搭載されている。

 現在はまだ開発中で、プレ発売は2023年末を予定している。発売されれば、世界初の本格AIを搭載した車載デバイスになる。

Pyrenee Driveとは

2019年にグッドデザイン賞を受けたPyrenee Drive(画像:Pyrenee)
2019年にグッドデザイン賞を受けたPyrenee Drive(画像:Pyrenee)

 Pyrenee DriveのAIドライバーアシスタントは、内蔵するGPU(画像処理装置)を使ってディープラーニングを行い、リアルタイムに歩行者や他の車両、自転車、バイクの存在を認識する。

 また、独自のアルゴリズムでその先の動きを予測。ドライバーの目や顔の向きで、眠そうではないか、よそ見をしていないかを認識し、タイミングを見て声をかける。ドライバーが眠くなったら音楽をかけたり、携帯電話のネットワークを通じて家族や職場に通話したりできる。また、映像と各種のデータはクラウドに自動アップロードされるため、Pyrenee Driveを搭載した車は全てコネクティッドカーとなる。

 わかりやすいユーザーインターフェース(UI)にこだわり、物流会社のトラックで実証実験を行ったが、ドライバーからの評判も上々だった。

 音声は、あえてロボットそのままの声を採用している。なぜなら、Pyrenee Driveとやりとりする際、人間らしさを出すよりロボットそのままの方が気楽だからだ。また敬語を使わず、フレンドリーさを提供する。

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