アマゾンのレビューに「商品とは関係ないクレーム」がたくさん書かれている理由
割れ物シールは「単なる注意喚起」
筆者がドライバーだったころ、ある家に集荷に行って荷物を手にしたとき、「嫌な音」がしたことがあった。その場で中身を確認したら、皿やグラスが無造作に詰め込まれていた。このまま発送されていたら間違いなく割れていただろう。このように、利用者側に明らかな梱包(こんぽう)の落ち度があった場合、破損になったときに補償されないこともある。
破損原因で一番多いのが「梱包不備」だ。宅配便をひとつ送る際、行き先別に仕分けられ、その他多くの宅配便と一緒に送られる。その仕組みを知らないと、
「自分の荷物だけが大事に運ばれている」
と勘違いすることになる。当然ながら、さまざまな荷物が積み重なり、運ばれていくのだ。
箱や紙袋に「割れ物シール」「上乗せ厳禁シール」が貼られているのをよく目にするが、あれはドライバーへの
「単なる注意喚起」
にすぎない。
現在、AI(人工知能)による仕分けが進んでいるとはいえ、まだまだ人の手に頼る作業が多い。人が作業する以上、誤った仕分けや荷物の落下などは当然起こる。そのことを踏まえ、
・輸送に耐えられる梱包
・日時に余裕を持った発送
を利用者側が心掛ければ、荷物事故はゼロに近づくだろう。
・梱包資材も商品なのか?
商品の箱や袋が破けているだけで、受け取りを辞退する人もいる。これは物流系のウェブサイトでよく取り上げてられている問題だが、そもそも梱包資材は
「商品の一部」
なのだろうか。また、梱包費用が商品代金に組み込まれているなら、商品の一部として見なければならないのか――といった問題もある。
梱包資材に破損があるだけで、荷物を「破損品」と判断する人は多い。商品に異常はなくても、梱包された箱に異常があれば、販売会社から箱だけを取り寄せ、中身を入れ替えて配達することもある。こんなことが続けば、梱包資材の上からさらに梱包をしなければならなくなる。
上記でも述べたように、商品そのものの価値が損なわれない限り、荷物事故とは扱わないため、
「破損の定義」
が受取人それぞれで異なっているかもしれない。その「やり場のない怒り」が、流通過程に対する批判レビューを増やしている原因ではないだろうか。
箱がつぶれていたから商品の評価が下がれば、宅配便会社もドライバーもいたたまれない気持ちになる。筆者は、レビューを
・商品への評価
・流通過程への評価
に分けた方がフェアだと考えている。
近年、SDGsの観点から簡素な梱包が増えている。荷物事故をなくすために輸送に耐える過剰な梱包を求めるのは時代に逆行している。今後、時代に即した梱包資材の開発や輸送方法が物流業界にとっての課題になるだろう。