ローカル線衰退の日本とは大違い 知られざる鉄道大国「スペイン」の実力、高速鉄道の総延長距離はなんと世界第2位だった!

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スペインは知られざる鉄道大国だ。高速鉄道網の国内総延長距離は約3662kmで、中国に次ぐ世界第2位だ。また、車両の技術開発にも傾注しており、すでにフリーゲージトレインも実用化している。

地下鉄で自動運転も一部導入

部区間で芝生を敷き詰めた軌道緑化が見られるバルセロナ郊外を走る路面電車(画像:小川裕夫)
部区間で芝生を敷き詰めた軌道緑化が見られるバルセロナ郊外を走る路面電車(画像:小川裕夫)

 スペインは、都市間を結ぶ高速鉄道のみならず首都・マドリードや観光都市として人気のあるバルセロナ、セビーリャなどでも地下鉄や路面電車といった市内交通を充実させている。

 一部の地下鉄路線では、すでに自動運転も導入されている。完全な無人運転ではないが、それでも自動運転に切り替えられた地下鉄では運転士の資格を必要としない。これらは、運転士の人手不足といった問題にも寄与している。

 また、スペインは主要12都市でセルカニアスを運行している。セルカニアスとは、旧国鉄でいうところの国電区間にあたる都市近郊電車のこと。大都市圏在住・在勤者のみならず近郊都市の住民が、通勤・通学で日常的にセルカニアスを利用する。

 筆者(小川裕夫、フリーランスライター)は、マドリード・バルセロナ・セビーリャなどで高速鉄道・地下鉄・セルカニアス・路面電車などを何回も乗った経験がある。その体験から照らして考えてみても、スペインの鉄道は運行本数が多く、特にフラストレーションを感じることはなかった。また、車内や駅ホームなども快適で、運賃の支払いもクレジットカードが利用できるなど、外国人だから利用しづらいということもなかった。

 スペインでは日本語による案内は皆無だったが、スペイン語のほかにも英語・フランス語・ドイツ語・カタルーニャ語(主にバルセロナ近郊で日常的に使用されている言語)など多言語への対応もしっかりしていた。

 意外に思われるかもしれないが、スペインは知られざる鉄道大国でもある。翻って日本の鉄道はコロナ禍で減便となり、現在は収支の観点から各地の路線で存廃議論がやかましい。新幹線の開業と同時に在来線を第三セクターへ転換したり、廃止を議論したりする動きも目立っている。

 鉄道大国ともいわれる日本は高速鉄道を重視し、他方でローカル線は衰退を余儀なくされている。スペインをはじめとする諸外国は、鉄道の利用奨励や回帰の機運を高めている。それはローカル線にも及ぶ。

 各国の事情はさまざまなので、容易にどちらがいいとは言い切れないが、対照的な現象が起きていることは確かだろう。

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