「給料安いし、人手も足りなさ過ぎ」 崖っぷち運送業界を包囲する「七つの困難」とその解決策
人手不足以外の課題もある

六つ目は、運送業界の喫緊の課題である「配送効率の悪化」だ。一般消費者によるインターネットショッピングの利用が浸透し、運送業において小口・軽量の貨物の取扱数が増加している。
国土交通省の「交通輸送統計年報」によると、国内の貨物輸送量(重量)は、1990(平成2)年以降では長期的に減少傾向にあり、2010年以降はほぼ横ばいで推移している。一方、重量が軽い小口の貨物の取扱数は、近年大幅に増加している。これは、通信販売などのEC(電子商取引)市場の拡大が影響している。
また、通信販売などで取り扱う商品の種類も豊富になり、貨物の
・小口化
・多品種化
が進んだため、「配送効率の悪化」という新たな課題が発生している。言い換えれば、トラックに積み込む1回当たりの貨物量が減少しているということだ。
同年報によると、トラックの積載効率(トラックの許容積載量に対して実際に積載している貨物の割合)が、1993年では55%弱であったにもかかわらず、2018年には
「40%弱」
までダウンしている。
また、一般消費者向けの宅配便の取扱件数の増加にともない、再配達の頻度もアップしている。さまざまな要因が小口配送の増加をもたらし、ドライバーの労働生産性を示す「配送効率」を悪化させている。
物流システムの導入とデジタル化

最後の課題は「DXなどの新技術の導入」だ。運送業界では、現在人手不足や高齢化などの人的課題、労働生産性の悪化など、大きな課題に直面している。これらを打破し、現場で恒常化している「負のスパイラル」を断ち切るためには、課題解決に向けて新たな発想や視点で施策を進めていく必要がある。
とりわけ、技術革新による解決策に大きな期待が寄せられている。代表的な施策として、物流システムの導入とデジタル化がある。
・手分け/手卸などの人手によるアナログな作業のデジタル化
・正確な在庫管理
・配車やルートの最適化
・配送中の荷物のリアルタイム追跡
などが可能となり、労働時間やコストの削減が図れる。
また、物流のオートメーションも大きな効果がある。物流ロボット、自動梱包(こんぽう)機、自動封函機などを導入し、人手作業や単純作業に特化して自動化を推進することで、省人化や効率化が図れる。
とりわけ、物流ロボットは、用途に応じて使い分けることができるので、作業負担の大きな低減が可能となる。さらに、海外では、自動運転やドローン配送の実用化も始まっている。国内では法整備などが整っていないが、深刻化している人手不足の切り札として期待されており、今後の動向が注目される。
業界の大手企業では、物流のDX化に向けてさまざまな技術導入を行い、課題解決に取り組んでいる。しかし、中小企業では、必要性を感じながら、資金不足やデジタル分野における人材不足により、思うように投資ができず、業界全体としてはDX化が遅れているというのが現状だ。