「給料安いし、人手も足りなさ過ぎ」 崖っぷち運送業界を包囲する「七つの困難」とその解決策

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人手不足からDXまで多くの課題を抱えている運送業界。その解決に向けて、現在注目されているのがM&Aだ。いったいなぜ注目されているのか。

事業戦略の解決策としてのM&A

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 運送業界のM&Aの件数が近年、加速度的に増加している。以前からあった同業同士の合併・買収(M&A)だけでなく、最近では異業種や類似業種を買い手とした実例が多くなった。

 運送業は

・慢性的な人手不足
・燃料の高騰
・規制の強化

などにより、自社の成長や存続のための戦略として、M&Aを選択する企業が増えている。

 M&Aは一般的に、経営者の高齢化による後継者不在の解決が広く知られているが、近年は事業戦略の解決策としても注目されている。具体的にどのような課題があり、M&Aで何が解決できるのかを今回見ていこう。

運送業を取り囲む七つの課題

運送業の年齢別就業者数の構成比。全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業の現状と課題」より。単位は%(画像:全日本トラック協会)
運送業の年齢別就業者数の構成比。全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業の現状と課題」より。単位は%(画像:全日本トラック協会)

 運送業の具体的な課題とは、

1.人手不足が進行している
2.高齢化が拍車をかけている
3.有効求人倍率が他業種と比べても高い
4.利益率の圧迫により賃金を上げにくい
5.他業種と比べ平均賃金の水準が低い
6.配送効率の悪化
7.DX(デジタルトランスフォーメーション。IT社会のあらゆる領域に浸透することでもたらされる変革)などの新技術の導入

の七つだ。

 まずは「人手不足が進行している」について。国内は少子高齢化の進展にともない労働人口が減少し、多くの業界や業種で人手不足が課題となっている。新型コロナウイルスの感染拡大で、一般消費者によるインターネットショッピングの利用増加も相まって、運送業界の需要は高まっている。

 一方、同業界では人手不足が深刻であり、とりわけ中小企業のドライバーの絶対数が不足し、人材確保が急務となっている。慢性的な人手不足で負のスパイラルに陥っている状態であり、運送事業者の大半を占める中小企業が、単独で解決できるレベルではなくなっている。大手企業も含めて業界全体の喫緊の課題となっている。

 次に「高齢化が拍車をかけている」だが、業界団体の全日本トラック協会が総務省の統計を基に作成した報告書によると、運送業の年齢別就業者数の構成比は表の通りだ。20代以下の若年層は約10%だが、50代以上は約40%であり、年々上昇している。また、中堅となる30代が、年々減少している。

 中高年層の労働力に強く依存し、高齢化が進んでいることは明らかだ。高齢者層の退職などを契機として、今後さらに人手不足が深刻化する恐れがある。

業界は慢性的な人手不足

有効求人倍率。2022年の数値は1~3月分。単位は倍(画像:厚生労働省)
有効求人倍率。2022年の数値は1~3月分。単位は倍(画像:厚生労働省)

 続けて「有効求人倍率が他業種と比べても高い」について。企業がどの程度労働者を必要としているかを示す指標のひとつとして、厚生労働省が発表している「有効求人倍率」がある。これは、公共職業安定所(ハローワーク)が取り扱った求人数を求職者数で割ることによって算出される。

 有効求人倍率が高い企業は、一般的により多くの労働者を求めていることになる。過去数年間おける「自動車運転の職業」の有効求人倍率は、表の通り、全職種平均の2倍程度と高い数値が続いている。

 ドライバーの求人数に対して同職業の求職者数が少なく、運送業界の人手不足が、慢性的かつ深刻な状況であることを物語っている。