「日本の鉄道」はもはや途上国レベル? 国鉄解体の功罪、鉄路・技術も分断され インフラ輸出の前途も暗い現実
国鉄解体は必要だったが、分割民営化のやり方は問題があった――。インドネシア在住のライターが日本の鉄道事情を冷静に切る。
鉄道インフラ輸出に苦難が訪れるとき

全国ネットであってこその鉄道だ。それが失われれば、優位性は大きく劣ることになる。結果、JR境界をまたぐ列車が激減し、会社間を複数またぐ貨物列車の運行の弊害にもなっている。そして、新幹線から物理的に切り離された地方線区は単なるお荷物になってしまった。
鉄道ネットワークが分断されただけでなく、国を代表する鉄道会社が不在なのが今の日本の状況だ。ただでさえ、小さな島国で、どうして規格が統一されず、こうもバラバラなのか。こんな状況では、世界に売り込めるものも売り込めない。
日本の少子高齢化はどうあがいても止めることができないなか、大量輸送機関としての鉄道を維持するには、鉄道インフラの海外輸出、あるいはインバウンド観光客の呼び込みという2択に迫られる。いずれにせよ、国の骨格をなす、強い鉄道を国の責任の下に再構築することは急務だ。
同時に、行き過ぎた合理化で、鉄道のシステムが誰でも扱えるように簡素化された。結果、鉄道技術を知る人材が大きく減った。今、海外鉄道プロジェクトの最先端に立って活躍し、欧州を中心とした若い専業の鉄道コンサルと戦っているのは、国鉄OB、また、国鉄時代のメーカー技術者たちだ。彼らは世界に通用する高い技術力を持っているだけでなく、会社を越えた幅広い人脈を持っている。これこそが、真のオールジャパンだ。
しかし、当然ながら高齢化は深刻だ。健康上の理由で、海外に渡航できなくなってくる人もいるし、皆、そう遠くない将来、引退せざるを得ない。国鉄時代に鍛え上げられた鉄道マンがプレーヤーから去ったとき、日本の鉄道インフラ輸出にとって本当の意味での苦難が訪れるのだ。