「日本の鉄道」はもはや途上国レベル? 国鉄解体の功罪、鉄路・技術も分断され インフラ輸出の前途も暗い現実
中国案を採用したインドネシア
さて、先日、ジャカルタ~バンドン高速鉄道向けの1号編成が中国からインドネシアに到着した。インドネシアが日本案ではなく、中国案を採用したことに、日本政府は大いに怒ったと言われているが、負けは負けだ。
そもそも、国家プロジェクトに入っていない(日本から借金までして作る気はない)ものを、無理やり日本が押し付けたわけで、実質政府負担のない中国案が採用されたのは当然のことだ。
それはさておき、導入された車両は中国国鉄の最新の高速車両CR400AF「復興号」そのものだ。仮に日本が受注していたとして、日本の新幹線を果たしてそのまま輸出できただろうか。
先述の通り、新幹線の技術を持っているのは民間企業であるJR各社だ。国はまずJRを説得するところから始めることになる。しかも、そのまま輸出するには、日本の新幹線はあまりにもコストが高すぎて、政府開発援助(ODA)で持ち込まれるような案件には通用しない。だから、JR東海はそもそも海外ODA案件には決して手を出さない。かといって、時期的にJR東日本はインド新幹線案件に相当のマンパワーを割いており、インドネシアどころの話ではなかった。結果的に中国案が採用されて良かったという関係者の声が大きいのも事実だ。
「鉄路先行交通強国」とは中国政府のうたい文句であるが、こんな勇ましいスローガンを打ち立てる国に、今の日本が勝てるわけがない。日本国内の鉄道の疲弊具合を見ていれば、一目瞭然だ。
コロナ禍を機に、日本国内の鉄道はさらに「見直し」が進んでいるが、鉄道会社任せ、地方自治体任せで国の積極的な介入が見られない。それどころか、線路を剥ぐこと、細分化していくことしか考えていないように見える。
国鉄解体時に、
「ローカル線もなくならない」
「長距離列車もなくならない」
と約束した政府与党自民党は、今こそ全国ネットワークとしての鉄道に対してしかるべき責任を取るときだ。死人に口なしとは言うが、反共・勝共の名の下に、日本規格の鉄道システムをアジアに展開するという崇高な理想を掲げる前に、まず自分の足元を見たらどうか。