ワゴン車も大破! 「シカ衝突事故」過去最多に、果たして防ぐ手立てはあるのか
車修理に約70万円も
2022年5月、広島県と岡山県をつなぐJR芸備線(げいびせん)で、3本の普通列車が計4頭のシカと相次いで衝突した。この事故で、上下線計14本に最大50分の遅れが発生し、約1000人に影響が出た。
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また、2022年3月には、三重県津市でシカと衝突したワゴン車が大破するという事故が起こった。助手席などのガラス3枚が粉々に割れ、修理には約70万円もの費用がかかった。現場は山奥ではなく、民家が立ち並ぶ住宅街で、近隣住民からは驚きの声が上がった。
電車と動物の衝突事故による損害額は年間数千万円にものぼるといわれているが、特にシカが関係する事故は、ここ数年で増加の一途をたどっている。
全国で増加するシカの交通事故
JR東日本盛岡支社によると、2020年にはシカとの衝突事故が647件発生した。そのうち、最も衝突事故が多い釜石線での事故件数は2016年の約2倍、山田線では約6倍であった。さらに、JR北海道が2022年6月に発表した調査報告結果によると、2021年度のシカ衝突事故発生件数は2632件にものぼり、過去最多だった。
北海道において最多となったのは電車事故だけではない。自動車とシカの衝突事故発生件数も2016年から増加し続けている。北海道環境生活部自然環境局の「令和3年 エゾシカが関係する交通事故発生状況」によると、2021年の発生件数は4009件で、5年連続で最多記録を更新し続けているのだ。
前述した三重県での事故のように、シカと衝突すると自動車が大破することもある。2021年に北海道で起きた衝突事故では、修理見積もりが約250万円となり、廃車にせざるを得ないという事例もあった。
各関係機関が発表した数字を並べてみるだけでも、北海道・本州ともに、事故件数が年々増加していることが見て取れる。耕作放棄地が増え、
・シカにとって住み良い環境が整った
・狩猟者が減少した
ため、シカの生息数や分布域が全国的に拡大している。
増え続けるシカとの交通事故を防ぐためには、どのような対策が有効なのか。さまざまな検証が重ねられてきたなかで、最も効果があるとされたのは、超音波や高周波を使った方法だ。