「住みたい街ランキング」は本当に正しいのか? 地方の交通網から感じた疑念、そもそも重要視すべき要素は何か

キーワード :
, , , ,
「街の住みここち&住みたい街ランキング2022<中国版>」で、広島県府中町が3年連続1位に輝いた。しかしランキングは本当に正しいのか。鉄道目線から問題を考える。

「自動車を使えば便利」は当てにならない

愛知県長久手市の位置(画像:(C)Google)
愛知県長久手市の位置(画像:(C)Google)

 こうした公共交通の空白を埋めるため、両町とも町営による交通機関を運営している。

 府中町は、2003(平成15)年から町営バスを導入。これに加えて、2021年10月から予約に応じて乗り合いで利用できるデマンドタクシーの試験運行を始めている。これは町内の北部に位置する清水ケ丘、桜ケ丘の両地区を対象としたもの。

 両地区は高低差25mあまりの坂を含む地区があり、道幅も狭小なため、最寄りのバス停まで300mあまり離れており、コミュニティーバスが十分な役割を果たしていないという問題があった。デマンドタクシーは予約が必要なものの、自宅前で乗降できる。2021年時点で1日平均10人弱の利用があったことが発表されている。現在の利用者は少ないが、今後の高齢化の進展を考えると、より充実を検討すべき存在だろう。

 早島町の町コミュニティーバスは2009年の新設以降、現在は3路線を運行。府中町が運賃100円なのに対して無料だ。ただ、3路線のうち1路線は週3日のみ。残り2路線は6日のみと全日運行ではない。停留所も多くは住宅地の入り口付近までとなっており、まだ交通弱者には十分対応しているとは言い難い。

 このように両町の「交通の利便性」とは、あくまで自家用車を使って出掛けられる基準で語られている。府中町では改善の兆しがあるが、早島町の場合はこれからだ。

 住みやすさに公共交通の利便性が重要なことは、8月24日に発表された「街の住みここち&住みたい街ランキング2022<全国版>」を見れば一目瞭然だ。

 このランキングの上位5位は

1位:愛知県長久手市
2位:東京都中央区
3位:東京都文京区
4位:福岡県福岡市中央区
5位:大阪府大阪市天王寺区

と、なっている。いずれも鉄道を中心に公共交通の充実した自治体だ。

 結局、「自動車を使えば便利」という条件のある地域は、かりそめの住みやすさにすぎない。肝心なのは「将来の足」をどう考えるかなのだ。

全てのコメントを見る