東京湾発「長距離フェリー」の現在 環境意識の高まりで注目、令和の船旅のありかたとは

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モーダルシフトの推進で注目されているカーフェリー。その歴史をたどり、身近な船旅のありかたを考える。

カーフェリーの主役はあくまで貨物

空港のロビーを思わせる横須賀フェリーターミナル待合室(画像:広岡祐)
空港のロビーを思わせる横須賀フェリーターミナル待合室(画像:広岡祐)

 東京湾発のフェリーは現在、北九州への2航路のみ。有明の東京港フェリーターミナルから徳島を経由して、北九州・新門司へ向かうオーシャン東九フェリー(オーシャントランス)、そして横須賀フェリーターミナルから新門司へ向かう東京九州フェリー(東京九州フェリー株式会社)だ。

 オーシャン東九フェリーは。各等級の船室とレストランなどの船内設備をもつ「スタンダードフェリー」と、旅客サービスを簡略化したモノクラスの「カジュアルフェリー」2本立てで運航していたが、2016年からは和室とレストランを廃した「シンプルフェリー」4隻の配船となった。

 横須賀と新門司を結ぶ東京九州フェリーは、2021年7月の就航。オーシャン東九フェリーが徳島港経由32時間、船内2泊の航路なのに対して、直航する東京九州フェリーは1泊、新門司港まで21時間という高速を誇る。レストランのほか、露天風呂やバーベキューを楽しめる甲板設備など、旅客サービスに力を入れた船内設備は魅力的。コロナ禍での厳しい船出となったが、運行開始から1年、新たな客層を掘り起こしているようだ。

 競合するこの2社の航路は、乗客サービスの方向性が異なるので単純な比較は難しい。オーシャン東九のシンプルフェリーは、給食設備は冷凍食品を中心とする自動販売機のみだが、その内容は非常にバラエティーに富んだもので、使いやすく案内された電子レンジや食器類が準備されている。効率化の極みのようなサービス体制なのだが、実に自由度が高いのだ。自分の好きな時間、好きな場所で食事をとれ、持ち込んだ食材で旅を楽しむ船客も目立つ。リピーターと思われるひとり旅が多いのも印象的である。

 カーフェリーによる輸送の主役はあくまで貨物であり、旅客サービスは付随的なものだ。長距離フェリー各社はさまざまな制約の中で模索を続けている。自分の旅行スタイルにマッチした船旅をえらび、洋上の時間をゆっくりと楽しみたいものである。

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