「鉄道は水害に弱い」 今夏の豪雨が突きつけた辛らつな現実、もはや高規格化待ったなしだ
過去の被害額を振り返る

記事を執筆した8月22日時点で、主要路線では奥羽本線の鷹ノ巣~大館間で運転が不可能になった。特急や貨物が走らない路線では、
・岩館~鯵ヶ沢間(五能線)
・鹿角花輪~大館間(花輪線)
・蟹田~三厩間(津軽線)
・今泉~坂町間(米坂線)
・野沢~喜多方間(磐越西線)
で運転ができない状況が続いていた。
被害が回復したところでも、お盆を前にして急ピッチで復旧したところや、一度被災して回復、その後再被災して回復という例もあるので、対応に追われていたというのが現実だろう。
JR東日本やJR西日本の被害総額はまだ出ていないので、過去の豪雨災害の鉄道の被害関連額を見てみよう。
JR九州は、
・2017年九州北部豪雨:39億円(日田彦山線や久大本線などが被災)
・2020年7月豪雨:53億円(肥薩線などが被災)
の災害復旧費用を計上した。2020年7月の豪雨被害による、肥薩線の復旧費用は約235億円にのぼるとJR九州は発表している。国による負担軽減策を取り入れると約76億円に圧縮されるものの、金の出どころが変わるにすぎない。
2019年の台風19号は、JR東日本が大きな被害を受けた。長野新幹線車両センターが浸水し、北陸新幹線の車両は廃車になった。廃車費用、線路や駅などの施設復旧費用などで約165億円かかった。これを含んだ特別損失は、約285億円となる。また三陸鉄道も被災し、その復旧費用は約17億円だった。国や岩手県、沿線自治体の補助金でまかなった。
大雨による鉄道の被害は、走行区間によって
「路線の存廃」
にかかわる話であり、復旧をどうするのかの議論にも時間がかかる。
只見線の奇跡

2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨により、JR東日本の只見線では会津川口~只見間が長い間不通になった。JR東日本は復旧に85億円かかると試算したが、JR東日本は黒字経営だったため、災害復旧援助は適用されなかった。一方で只見線は閑散線区だったため、バス転換の話も出てきた。
しかし、只見線は残ることになった。福島県や沿線の市町が施設と土地を保有、JR東日本は、車両を運行する上下分離方式を採用することが2016年12月に決まった。会津川口~只見間はこの方式で復旧、2022年10月1日に運転を再開する。それに向けた試運転がいま行われている。一方、JR九州の肥薩線は復旧のめどが立たず、日田彦山線はバス高速輸送システム(BRT)に転換して復旧ということになった。
ここまでの例を見てみると、鉄道は水に弱く、何かあった際の復旧に時間と金がかかるということだ。この夏の豪雨で橋りょうの流出などがあったJR東日本米坂線は、復旧に長い時間がかかることが予想される。
しかし米坂線は、被災区間は輸送密度(1kmあたりの1日の平均乗客数)300以下、営業係数(100円の収入を得るのに要する費用)2500越えという閑散区間だ。この区間を元通りに復旧させることの是非は議論になり、JR東日本も費用を負担できるか、あるいは地元自治体がどう関与するかが焦点となるだろう。