米国で台頭する「EV国粋主義」 それでも、やっぱり「エンジン車」は無くならないワケ
2050年以降もエンジン車は残る
EU加盟27か国はそこに踏み込んで、2035年以降、EU域内でのエンジン車の「販売禁止」を合意したが製造は禁止していない。EUで生産したエンジン車やハイブリッド車を中国、米国、インド、新興国などで販売することは可能だ。
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図の左側は年間販売台数で、2050年のEVのシェアは50%以上になると予測している。
ここで言うEVとは、BEV+PHEV+AFV(代替燃料車)であることに注意してほしい。
右側は保有台数だ。車両の平均寿命は約11年であり、2050年でHEVを含めると10億台程度のエンジン車が残ると予測している。これらのCO2排出を低減することは重要な課題で、そのために合成燃料やCCUSが必要だ。
脱炭素を念頭に置きながらも、消費者自身が「自分の収入や生活スタイルに合った商品を自分で選ぶ」ことが自由主義経済の大原則だ。技術開発を加速するために、初期段階での公的支援は必要だが、ある時期以降は自力で市場を獲得して行かなければならない。BEVにもその時期が近づきつつある。
現在、車載バッテリーはBEVコストの30~40%を占めている。マッキンンゼーは、「量産効果でコストは下がる」と言うが、そんな簡単なものではない。なお、ベンツのマルクス・シェーファー最高技術責任者は4月に
「今後数年間でバッテリー価格はさらに上昇する可能性がある」
「50ドル/kWhになればエンジン車と同等コストとなるが、現在のバッテリー技術では不可能で、実現はずっと先だ」
と語っている。
日産は現在、次世代全個体バッテリーを出力単価「65ドル/kWh」を目標に開発している。2022年11月には、エジプトでCOP27が開催される。COP26で「先進国から新興国への毎年1000億ドルの援助」を求めたエジプトが、議長国として先進国を説得できるのか。BEVが100%になれば、脱炭中立が実現するわけではない。