米国で台頭する「EV国粋主義」 それでも、やっぱり「エンジン車」は無くならないワケ
フリート車と総所有コスト
現在、道路を走る車両の約50%は企業が登録しており、欧米ではこれらをフリート(車両群)と呼ぶ。フリートは商用車だけではなく、幹部社員に貸与される乗用車(カンパニーカー)も含む。
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これらの脱炭素化は、
・企業の社会的責任
・ESG投資
の観点からも重要な一方、経営的観点からは総保有コスト(TCO)を最小限に抑える必要がある。フリートは通常、リースなのでそのTCOは表の構成となる。
国ごとに差はあるが、優遇策の有無でTCOは大きく変わる。企業の車両担当者は悩んでいるだろうが、まずはHEVへの切り替えを急いでいる。
また、乗用車ではHEV用としてエンジンが残る。乗用車よりコストや積載荷重/容積の制約が厳しいバンや大型トラックでは、HEVのほかに代替燃料を使用する純エンジン車が残る可能性もある。理由は簡単で、誰も100%BEVとなることを求めていないし、宣言もしていないからだ。
気候変動に関する政府間パネルは2014年、産業革命後に増加しているCO2を抑制する必要性を唱えた。2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で合意されたパリ協定には、産業革命以降の気温上昇を2度未満に保つ目標と、1.5度に抑える「努力目標」が明記されている。
これを受けて、世界137か国は「実質ゼロ排出」または「炭素中立」を宣言したが、運輸部門の平均比率は17%程度で、発電や産業(製鉄など)の方がCO2排出量は多い。なお、「実質」や「中立」とは、CO2を「排出しても、後に無害化すれば良い」と言う概念で、
・バイオ燃料
・CO2回収、転換利用、貯留(CCUS)
・再生電力由来の合成燃料
などが該当する。「BEVに一本化」などと言う文言はどこにも出てこないのだ。