米国で台頭する「EV国粋主義」 それでも、やっぱり「エンジン車」は無くならないワケ

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BEVの現状を踏まえ、2050年でもエンジン車が残る理由を明らかにする。

世界のEV販売状況

2016~2021年における、特定国・地域の電気自動車登録台数および販売シェア(画像:国際エネルギー機関)
2016~2021年における、特定国・地域の電気自動車登録台数および販売シェア(画像:国際エネルギー機関)

 国際エネルギー機関による世界主要国のEV(BEV+PHEV)販売状況の推移を図に示す。水色がBEV、青色がPHEVの販売台数で、黒線はEVの販売シェアを示す。

 2021年の特徴は、

・EV販売台数は中国、欧州で急増し、他でも増加
・欧州ではPHEVも急増
・中国と欧州のEVシェアは15%を超えるが、他は5%程度と低い
・ノルウェーが他国を圧倒し、シェアは90%に迫る

 ノルウェーのシェアが圧倒的に高いのは、さまざまな優遇策が要因となっている。起亜のEV「ニロ」は現地価格が約520万円で高く感じるが、物価の高いノルウェーでは相対的に安い。

各国の脱炭素政策

「電動化またはエンジン車禁止時期」と「実質ゼロ排出宣言時期」(画像:国際エネルギー機関)
「電動化またはエンジン車禁止時期」と「実質ゼロ排出宣言時期」(画像:国際エネルギー機関)

 次に、各国の電動化と実質ゼロ排出(脱炭素化)の目標時期を図で確認する。

 米国公益事業評議会によると、世界196か国中137か国が意思を表明し、ブータンとスリナムは実質ゼロ排出を達成済みだ。残る135か国中、スウェーデンが最も早く2045年、123か国は2050年、中国は2060年を目標として宣言した。

 デンマーク、フランス、ハンガリー、ニュージーランド、英国の6か国は実質ゼロ排出を法制化済みで、カナダ、韓国、欧州連合(EU)ほか5か国は法制化の準備中だ。国際社会への責任として野心的な目標を掲げるが、実現には自信がない。

 国連環境計画は年次報告書の中で、

「各国の実質ゼロ排出に向けた公約は“空手形”に終わるリスクがある」

と指摘する。

 ウィズコロナが当たり前となった現在、人々の行動には

・在宅やハイブリッド(在宅+出社)勤務により、通勤や出張での移動が減少した
・感染防止のため、公共交通機関やシェアカーを避けて自家用車を選ぶ

という変化が起きている。

 2022年のEYの「Mobility Consumer Index(モビリティ消費者指数)」によると、次に購入する車として、BEV、PHEV、HEVを選択する予定の人が初めて調査対象の半数を超え、52%となった。動機は環境問題のほか、エンジン車に対する課税やEVへの優遇策も浮上している。

 また「Edmunds.com」によると、2022年のEVの世界平均新車価格は6万1000ドルで、全新車の平均価格は4万6000ドル、現在この差を埋めている補助金は今後も続くのだろうか。

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