坂の多い住宅地に取り残された高齢者たち モビリティの進化は「昭和の功労者」を救う手段となりえるか?

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高度成長期以降に開発された、都市郊外にある丘陵地帯の住宅地。その現在が問題になっている。高齢者が移動しづらくなっているのだ。

首都圏で導入する際の問題

丘陵地にある住宅街のイメージ(画像:写真AC)
丘陵地にある住宅街のイメージ(画像:写真AC)

 導入にあたって、どのような課題があるのか。グリーンスローモビリティでは、「事業化に至らなかった理由」についても調査している。次に、主なものを挙げる。

・利用者が少なく、導入に対する希望も少なかった
・当初期待していた運行主体や運転者が確保できなかった
・利用者からの収入だけでは事業が難しいと判断し、導入を断念した

首都圏で導入する際、下のふたつと同じ問題が浮上するだろう。

 電動カートなどを導入する場合、バス・タクシー会社やNPOへの委託が想定される。その確保も検討課題だが、同時に誰が主体となって委託するか、についても検討しなければならない。

 一般的に、運行地域の自治体が委託することになるが、一部の地域だけで利用するものに対して支出するため、ハードルは高い。整備費や運転手の人件費を考えると、利用者から運賃を取っても採算の取れる事業ではない。

「高齢者の足」としてのモビリティは新しい福祉の形、つまり利潤が得られなくても、日本国憲法第25条で定められた

「健康で文化的な最低限度の生活」

を支えるためのものであり、たとえ採算が合わなくても、必要なら導入しなければならない。国は最新技術による利便性をPRするだけでなく、こうした理解を国民に促す必要もあるのだ。

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