坂の多い住宅地に取り残された高齢者たち モビリティの進化は「昭和の功労者」を救う手段となりえるか?

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高度成長期以降に開発された、都市郊外にある丘陵地帯の住宅地。その現在が問題になっている。高齢者が移動しづらくなっているのだ。

「グリーンスローモビリティ」とは何か

多様な車両が見られるグリーンスローモビリティ(画像:国土交通省)
多様な車両が見られるグリーンスローモビリティ(画像:国土交通省)

 その解決策のひとつが、2018年度から国土交通省が実施している「グリーンスローモビリティ」だ。

 グリーンスローモビリティとは、

「時速20km未満」

で公道を走れる電動車を使った小さな移動サービスのことだ。

 車体の大きさはさまざまだが、小回りの利く5~7人程度のゴルフカートに似た車両が最も多く使われている。神奈川県綾瀬市で2021年に実施された実証実験では、高齢者の多い郊外住宅地の複数ルートで運行され、市役所や病院などへのアクセスも行われた。

 新たなモビリティとしての電動車いすも関心が高まっている。2020年に横浜市栄区の住宅団地「上郷ネオポリス」で行われた実証実験では、電動車いす「WHILL(ウィル)」を個人レンタル・コミュニティー施設に設置する試みが行われた。

 このほか、電動カート・電動車いすを使った実証実験は各地で実施されており、高齢化率の高い住宅地での最も有効な移動手段として期待されている。もちろん住宅地に限らず、高齢者の回遊を容易にする手段としての使用も想定されている。

5地域で既に事業化

横浜市栄区の住宅団地「上郷ネオポリス」(画像:(C)Google)
横浜市栄区の住宅団地「上郷ネオポリス」(画像:(C)Google)

 地方では既に導入が始まっている。

 グリーンスローモビリティの2021年度の報告書によると、2020年までに実証実験を行った地域18のうち、5地域で事業化が実施された。事業化が行われているのは広島県福山市や山口県宇部市など、いずれも地方都市である。

 首都圏では、千葉県千葉市と四街道市が実証実験に参加したものの、現時点では調査を継続している。首都圏の方が導入が遅れているのだ。

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