世界トップレベルの鉄道大国「日本」で貨物輸送が全然伸びない本質的理由
鉄道網の価値は「ネットワーク効果」で決まる
物流の担い手は輸送網というネットワークだ。このうち鉄道は鉄道、道路輸送であれば道路網ということになる。従って、鉄道貨物輸送の利用が低調なのは
「鉄道網というネットワーク」の経済的価値が低いということである。
さて、輸送網の経済的価値を理解するうえで重要なのが、ネットワーク効果の理論だ。この理論をごくかみ砕いて説明すると、
「ネットワークの価値は利用者数によって決定される」
ということである。
このわかりやすい例が携帯電話網だ。携帯電話加入者はサービス開始当初にはごく少数だったため、その経済的価値は必ずしも高くなかった。しかし国民の多くが携帯を持つようになると、水道や電気に匹敵するようななくてはならないインフラとなり、このことがさらに加入を促進することとなり、通信網の経済的価値は指数関数的に成長するに至ったのだ。
この例からわかるとおり、ネットワークはその性質上、
「誰もが接続できる」
ことが価値を生むのであり、逆に言えば、分断されることで加速度的に価値が失われるということでもある。
前置きが長くなってしまったが、鉄道網の価値もネットワークの一種であるため、その性質はまったく同じであり、例えば分断が価値を低下させるのは鉄道でも同様だ。
仮に青函トンネルで貨物鉄道が走行できなくなり、北海道の鉄道網が本州と切り離されてしまったとすると、北海道内の機能にまったく変化がなかったとしても、その経済的価値の相当部分は失われてしまうだろう。
鉄道におけるさまざまなネットワークの「分断」
貨物鉄道網自体は全国に張り巡らされているため、見た目上はそのような「分断」はないように見えるが、これに類似する問題を各所で抱えている。その一例が、国際海上コンテナの輸送だ。
言うまでもなく鉄道は大量輸送機関であり、
「大ロットの貨物を一気に運ぶ」
ことがメリットだ。その大ロット貨物の代表格と言えるのが海上コンテナであり、極めて鉄道向きの貨物であるため、世界的に見て鉄道輸送が多用されている。
ところが日本国内を見ると、海上コンテナの主流である40フィートコンテナを運べる鉄道ルートは非常に限定されており、低床貨車を用いない限り(以下同様)多くの経路を通行できないのが現状だ。
また、海上コンテナは高さに応じて「通常サイズ」と「背高」にわかれるが、背高になるとさらに条件が厳しくなり、利用可能なルートは関東~東北方面の一部に限定されてしまう。
この原因は、一部に背高コンテナの通行不可能なトンネル等があるためだが、このような一部の分断によって、ネットワークの価値は大きく損なわれることになる。