世界トップレベルの鉄道大国「日本」で貨物輸送が全然伸びない本質的理由

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旅客輸送で日本は世界トップレベルの「鉄道大国」だが、貨物輸送は低調である。貨物輸送の分担率などで見ると、欧州連合(EU)の半分にも満たない。鉄道貨物の利用が進まない本質的な理由とは何か。

鉄道網の価値は「ネットワーク効果」で決まる

EUのモード別貨物輸送量の推移(トンキロ)。「ユーロスタット」より作成。海運はEU域外の輸送を含まない(画像:EU)
EUのモード別貨物輸送量の推移(トンキロ)。「ユーロスタット」より作成。海運はEU域外の輸送を含まない(画像:EU)

 物流の担い手は輸送網というネットワークだ。このうち鉄道は鉄道、道路輸送であれば道路網ということになる。従って、鉄道貨物輸送の利用が低調なのは

「鉄道網というネットワーク」の経済的価値が低いということである。

 さて、輸送網の経済的価値を理解するうえで重要なのが、ネットワーク効果の理論だ。この理論をごくかみ砕いて説明すると、

「ネットワークの価値は利用者数によって決定される」

ということである。

 このわかりやすい例が携帯電話網だ。携帯電話加入者はサービス開始当初にはごく少数だったため、その経済的価値は必ずしも高くなかった。しかし国民の多くが携帯を持つようになると、水道や電気に匹敵するようななくてはならないインフラとなり、このことがさらに加入を促進することとなり、通信網の経済的価値は指数関数的に成長するに至ったのだ。

 この例からわかるとおり、ネットワークはその性質上、

「誰もが接続できる」

ことが価値を生むのであり、逆に言えば、分断されることで加速度的に価値が失われるということでもある。

 前置きが長くなってしまったが、鉄道網の価値もネットワークの一種であるため、その性質はまったく同じであり、例えば分断が価値を低下させるのは鉄道でも同様だ。

 仮に青函トンネルで貨物鉄道が走行できなくなり、北海道の鉄道網が本州と切り離されてしまったとすると、北海道内の機能にまったく変化がなかったとしても、その経済的価値の相当部分は失われてしまうだろう。

鉄道におけるさまざまなネットワークの「分断」

国際海上コンテナ輸送可能線区。国交省「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」中間とりまとめより(画像:国土交通省、JR貨物)
国際海上コンテナ輸送可能線区。国交省「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」中間とりまとめより(画像:国土交通省、JR貨物)

 貨物鉄道網自体は全国に張り巡らされているため、見た目上はそのような「分断」はないように見えるが、これに類似する問題を各所で抱えている。その一例が、国際海上コンテナの輸送だ。

 言うまでもなく鉄道は大量輸送機関であり、

「大ロットの貨物を一気に運ぶ」

ことがメリットだ。その大ロット貨物の代表格と言えるのが海上コンテナであり、極めて鉄道向きの貨物であるため、世界的に見て鉄道輸送が多用されている。

 ところが日本国内を見ると、海上コンテナの主流である40フィートコンテナを運べる鉄道ルートは非常に限定されており、低床貨車を用いない限り(以下同様)多くの経路を通行できないのが現状だ。

 また、海上コンテナは高さに応じて「通常サイズ」と「背高」にわかれるが、背高になるとさらに条件が厳しくなり、利用可能なルートは関東~東北方面の一部に限定されてしまう。

 この原因は、一部に背高コンテナの通行不可能なトンネル等があるためだが、このような一部の分断によって、ネットワークの価値は大きく損なわれることになる。

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