日本のEV販売台数、米国のわずか5%! 国内でいまだ根付く「忌避感」の正体
ほかにもあるネガティブな誤解
そのほかのネガティブな誤解について、次のふたつの「説」がある。
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●「エコではない」説
2020年の資源エネルギー庁の統計によると、再生可能エネルギーによる発電シェアは19.8%に達している。これに原子力を足すと、CO2を排出しない発電は23.7%、全発電量の約1/4になる。この比率は将来、大きく拡大することはあっても縮小することはない。
仮に、EVの効率がハイブリッド自動車(HEV)を含むガソリン車と同等だとしても、現在販売されたガソリン車は将来にわたって同レベルのCO2を排出し続けるが、EVは再生可能エネルギーの発電シェアが上がれば上がる程、現在発売されたEVだとしてもCO2の削減に大きく貢献できる。
その上、モーターのエネルギー効率は90%程度、エンジンのエネルギー効率は20%程度と言われており、発電、送電、充電のロスを考慮しても、EVの方がガソリン車よりはるかにエネルギー効率が高い。今、販売されているEVでも十分エコだし、将来はそれ以上になるのだ。
●「電力逼迫の日本ではあり得ない」説
日本自動車工業会(自工会)が2020年12月、「国内の年間の乗用車販売約400万台がすべてEVになり、保有台数(現状6200万台規模)がすべてEVになると、電力ピーク時の発電能力は現状より10~15%増強する必要があり、それは原子力発電だと10基、火力発電だと20基程度に相当する」という見解を示した。この計算は妥当だが、先述の様に、EVは自宅充電(基礎充電)が基本で、それは電力負荷の低い夜間に行われる。
少し古いデータだが、電力が逼迫した2001(平成13)年7月24日の昼間の最大電力は1億8200万kW、その日の夜間の最小電力は8900万kWと、夜間は最大負荷の48%のみしか使用されなかった。この夜間の余剰電力を使えば、発電所の増設なしにEVは充電できるし、また最近のEVに採用されているV2X(グリッドや家への電力供給機能)を使えば、電力負荷の最大時間に、EVから電力供給をすることも可能で、電力負荷の平準化にも貢献できる。
そのため、自工会のコメントは、計算上は正しいが、実運用上は大きな誤解を含んでいたと言え、電力負荷の逼迫に対してもEVは大きく貢献できると理解すべきである。
この様な日本人のEVに対する誤解やネガティブなイメージを解消していくことで、EV購入の意識は高まっていく。しかし、いまだ日本市場には十分な数のEVモデルのラインアップがないのも事実だ。多くのEVを日本市場に投入しても、現在の日本人の購入モチベーションでは数が売れない事情もある。
米国EV購入意向調査では、2021年には26モデル、2022年には46モデルのEVが調査対象となっている。米国では多くのブランドのさまざまなEVをユーザーが選択できる。
一方、日本メーカーが国内で販売しているEVは、2022年7月時点で、
・トヨタBZ4X
・レクサスUX300e
・ホンダe
・日産アリア、リーフ、サクラ
・マツダMX-30 EV
・スバルソルテラ
・三菱eKクロスEV
の9モデルのみだ。それ以外に、輸入車としてテスラモデル3やモデルY、欧州系のプレミアムブランドのEVもあるが、日本のユーザーが購入したいモデルや価格のEVがそろっているかと言えば、ノーと言わざるを得ない。
今後、国内でもその魅力がしっかり浸透して、ネガティブな誤解が払拭されれば、欧米から数年遅れて、日本市場でも販売台数の飛躍的な拡大が始まるかもしれない。そのためには一刻も早く、自動車業界、自動車メーカー各社による啓発活動や、魅力的なモデルの早期充実が必要だ。
最後にひとつだけ付け加えておくと、米国EV購入意向調査によると、米国でEVを購入したベテランユーザーの90%以上が次回もEVを購入すると回答している。一度、EVに乗ると非常に高い確率でEVリピーターとなるのだ。それほど、EVはユーザーを引きつける魅力にあふれた車であるし、商品魅力度の高いモデルの投入は将来の各ブランドの販売シェアに大きな影響を与える。それが、黒船EVの販売拡大と日本メーカーのシェア失墜につながらない様に、日本メーカーにはさらなる奮起を期待したい。