日本のEV販売台数、米国のわずか5%! 国内でいまだ根付く「忌避感」の正体

キーワード :
,
EVに消極的だった米国市場の販売台数は現在、43万台に達しているが、日本市場はいまだに2万台を超えたレベルだ。違いの背景には何があるのか。

航続距離が運転習慣に与える影響とは

BEVの航続距離が運転習慣に与える影響(画像:J.D.Power)
BEVの航続距離が運転習慣に与える影響(画像:J.D.Power)

 上図は、EVの

「航続距離の短さ」
「現状の充電インフラ状況」

を理由に、ドライブの目的地を妥協したことがあるかどうかを聴取したものだ。

 EV初心者の70%、ベテランユーザーの82%が、「全く妥協しなかった」「ほとんど妥協をしなかった」と回答している。つまりEVユーザーの多くが、

「ガソリン車で行けた所にはEVでも行けた」

と回答しているのである。

 とはいえ、裏を返せば、EV初心者の30%は何らかの妥協を強いられたと回答し、ベテランユーザー(18%)よりも課題を抱えている様に見える。この違いはどこにあるのだろうか。

 航続距離についても、EV初心者は大きな誤解を持ったままEVに乗り始めている。特に米国の大半のEVユーザーは一軒家に住んでおり、自宅充電(基礎充電)環境を持っている。EVの航続距離はEPA(米国環境保護庁)サイクルで400~500kmに達しているが、自宅での充電環境があれば、夜間駐車している時間に充電をし、翌朝には100%チャージされた状態で出発できるのだ。

 いったい、1日に400km以上走るシーンが年間どのくらいあるのだろうか。年間に数日あるかなしかのシーンを想定して不安を覚えるのは、ある意味ナンセンスだ。たとえ400km以上の長距離を運転する日があったとしても、途中で30分ほどの休憩を兼ねた充電をすれば、600~700kmを走り切れるのだから、現状の性能でも十分事足りるはず。

 にもかかわらず、多くのEV初心者がその誤解を持ったままEVに乗り始めているため、

「漠然とした不安」

から、ドライブの目的地が影響を受けたと回答していると考えられる。一方、ベテランユーザーはこれまでのEVの使用経験から、誤解や不安を払拭(ふっしょく)できているということだろう。

 日本でも、自宅充電(朝に満充電で自宅を出発できる)環境を持っていて、EVをセカンドカーとして通勤や買い物でしか使わないなら、200km程度の航続距離で十分だ。また、400km以上の航続距離と30分の急速充電環境が高速道路のサービスエリアに整備されていれば、年に数回の長距離ドライブを行うファーストカーとしても十分な性能を持っている。

 しかしほとんどの日本人が、EVの充電は自宅ではなく、ガソリンスタンドと同じ様な外部の充電スタンド行うイメージを持っている。だから、できるだけ長い航続距離がないと頻繁に充電に行かなくてはならないし、

「充電スタンドで30分以上も待たなければならない車なんて、まだまだ使えない」

と思っている。

 この誤ったイメージのせいで、EVの航続距離性能や充電インフラの充足に課題があると考えているのだ。これは、日本でEVの拡大を妨げる一因と言えるだろう。

 さらに、日本ではマンションなどの集合住宅に居住している比率が多いため、集合住宅の駐車場への充電設備設置(自宅充電環境の確立)は日本でのEV拡大に向けた課題のひとつである。

全てのコメントを見る