なぜ中古車はコロナ・戦争で「品薄」になったのか? 1から学ぶ「物流グローバル化」の正体
新型コロナ禍での世界的なロックダウンや、ロシアによるウクライナ侵攻などによって、新車の納期遅れが発生。それにより中古車市場の品薄状態が続いている。この相関関係が意味する「物流のグローバル化」について、今一度考えたい。
モノの動きがグローバルになった背景

では、なぜモノの動きは変化したのだろう。そこには物流をとりまく環境の変化と、資本家からの要請があった。
かつて海上輸送はとてつもない燃料費がかかる上、天候や海賊で到着が左右される採算の合わない輸送手段だった。今となっては大量に運べる海上輸送の方がコスト面で有利なケースが多いが、陸上輸送の方が安全でコスト的に有利な時代もあったのだ。
しかし、技術革新や国際的な枠組みが整うことで、徐々に貨物輸送の信頼性は向上する。運賃が安くなり、輸入関税が撤廃されると企業は必ずしも自国で生産活動を行う必要はない。そして生産コストの安さで外注先を決めるようになった。
環境の変化に伴って、投資家からの要請も変わっていった。企業が土地や建物、研究施設や機械・設備などに資本を投じることが嫌われるようになったのだ。身軽な経営が好まれるようになった結果、アウトソーシングが進んでいったというわけである。
工場の建設場所にも変化が起きている。かつては鉱山や船で荷物を運び出しやすい河川や海のそばが好まれた。ところがいまは特定の国の特徴や立地条件はほとんど問題にならない。代わって企業を引き付けるのは、補助金などの政府による支援だ。
実際、2022年6月、国は熊本県に建設中の台湾の半導体メーカーTSMCの工場に4000億円を超える補助を決めた。県も周辺道路などの整備を行うという。