サステナブル燃料か水素か 航空機CO2削減の切り札 ボーイング対エアバスの構図も

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ボーイングが2030年までに全民間航空機の燃料を切り替えると表明し、注目が高まる環境配慮型燃料「SAF」。エンジンメーカーやエアラインもSAFの商用飛行に乗り出すが、一方のエアバスは代替燃料に水素を打ち出す。「正解」はあるのだろうか。

100%SAFでも二酸化炭素排出量は75%?

ユーグレナなどが建設した日本初のバイオジェット燃料製造プラント。ASTMの認証も取得している(画像:ユーグレナ)。
ユーグレナなどが建設した日本初のバイオジェット燃料製造プラント。ASTMの認証も取得している(画像:ユーグレナ)。

 ロールス・ロイスは前述したパール700の運転試験を報じたニュースリリースで、100%SAFを使用した場合の同エンジンの「ライフサイクル」における二酸化炭素の排出量は、ジェット燃料を使用した場合に比べて75%以上低減できると述べている。

 SAFで二酸化炭素の排出量をどれだけ低減できるかという数字には、原料として使用される藻類などの植物が行っていた光合成による二酸化炭素の吸収や、製造工程での排出量低減も含まれており、ロールス・ロイスのライフサイクルで排出量を低減できるという文言の「75%以上」は、これらを含んだ数字であると考えられる。

 このようにボーイングやロールス・ロイスがSAFによる施策を打ち出すなか、全く別コンセプトの航空機開発に乗り出しているのが、アメリカよりも環境問題への意識が高い傾向のあるヨーロッパ企業のエアバスだ。2020年に、二酸化炭素が一切発生しない水素を燃料とする旅客機のコンセプト「ZEROe」を立ち上げた。ただ、現在燃料として使われる水素は生産工程で二酸化炭素を排出するため、二酸化炭素の排出ゼロは水素を「再生電力を使用する電気分解で製造した場合」だ。

 エアバスはZEROeコンセプトの実用化にあたっては、研究開発だけでなく水素の輸送と供給に必要となる大規模なインフラ整備や、エアラインによる従来型の航空機からの更新を支える仕組みづくりも不可欠であるとして、政府による手厚い支援が必要になるとの見解を示している。普及にあたってのハードルは低いとは言えない。

 ヨーロッパでは2019年に二酸化炭素を多く排出する航空機の利用を避け、相対的に排出量の少ない鉄道を利用しようという「Flygskm」(飛び恥)と呼ばれるムーブメントが起こっている。将来的にさらに厳しくなることも予想される。

 航空機の二酸化炭素排出に対する厳しい目のなかで業容を拡大し、さらに将来の旅客機業界での覇権を得るために、ボーイングとエアバスは手法こそ異なるものの、二酸化炭素の排出量低減に向けた、大きな技術的挑戦を決断したのだと筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思う。