サステナブル燃料か水素か 航空機CO2削減の切り札 ボーイング対エアバスの構図も

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ボーイングが2030年までに全民間航空機の燃料を切り替えると表明し、注目が高まる環境配慮型燃料「SAF」。エンジンメーカーやエアラインもSAFの商用飛行に乗り出すが、一方のエアバスは代替燃料に水素を打ち出す。「正解」はあるのだろうか。

2030年までにサステナブル燃料100% ボーイングの宣言

ボーイングがバイオ燃料などSAF普及へ取り組む(画像:ボーイング)。
ボーイングがバイオ燃料などSAF普及へ取り組む(画像:ボーイング)。

 ボーイングは2021年1月22日、すべての民間航空機を2030年までに「SAF」(Sustinable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)だけで飛行させることを目指すと発表した。航空機メーカーとして、排出ガスの問題への対応に大きな道筋をつけたといえるだろう。

 現在全世界で排出される二酸化炭素のうち、航空機の排出量は2~3%程度だが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2050年には航空需要の増加により、航空機からの二酸化炭素排出量は2倍から5倍に増加すると予測している。

 これを受けてICAO(国際民間航空機関)は2016年の総会で、2050年に二酸化炭素の排出量を16年時点から50%削減する方針を発表し、それ以来、航空機メーカーやエンジンメーカー、エアラインは二酸化炭素の排出量を低減するさまざまな取り組みを行って来た。SAFの使用もそのひとつで、2021年現在、SAFはジェット燃料と50対50で使用することが認められている。

 ICAOの目標発表以前からボーイングはSAFに注目しており、2008(平成20)年からエアラインやエンジンメーカーと協力してSAFを使用する実機による飛行試験を開始し、2018年には物流大手のフェデックスと協力して、世界で初めて100%SAFによる777の貨物機型777Fのフライトを成功させている。

 ボーイングは2019年に発生した737MAXの墜落事故と、2020年から現在も続くCOVID-19(新型コロナウイルス)の全世界的な感染による航空需要の落ち込みによって業績が悪化しており、企業イメージも低迷している感がある。2030年までにすべての民間航空機をSAFだけで飛行させるという発表は、同社が民間航空機業界で依然として世界をリードしていることを印象付ける狙いもあると見られる。

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