「トラックドライバー = 底辺職」などとのたまう人間が、実は単なる世間知らずなワケ

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6月に、トラックドライバーなどを「底辺職」と評する記事が掲載され、炎上した。業界の現状をデータで明らかにし、その誤りを指摘する。

運送会社はドライバー確保に躍起

女性ドライバーのイメージ(画像:写真AC)
女性ドライバーのイメージ(画像:写真AC)

 長時間労働以外に、定着率の問題も論点だろう。「ブラックな職場」であれば仕事が続かないし、会社としては「労働者をどんどん使い捨てにする」ということになるだろう。この点はどうだろうか?

 結論から言うと、運送業の離職率は他の職種よりもむしろ低めで、上記のようなイメージとは全く異なる。

 中小運送会社の多くは平均年齢が50歳を超えているが、ひとつの会社に長く勤めるドライバーが多いため、毎年おおむね1歳ずつ高齢化が進んでおり、むしろ高齢化が問題になっている。

 なお少子化による人手不足は他の業種も同じだが、ドライバーには製造業や農業のような技能実習生の制度がなく、外国人労働者がほとんどいない。そのため人手不足はより深刻だ。

 ドライバー職は元来「つぶしが利く(スキルの普遍性が高い)」職業であり、転職が容易だが、以上の状況から、現在では完全に「売り手市場」となっている。最近の求人倍率はおおむね3倍程度に達しているため、

「ひとりのドライバーを3社の運送会社で奪い合っている」

のが実態だ。

 超大手など知名度のある一部の企業はともかく、中小運送会社は人材確保に躍起になっているため、「ドライバーを次々に使い捨てる」ようなケースは、まずあり得ない。ドライバーから「そっぽ」を向かれるようなブラックな運送会社は自然と淘汰(とうた)されているのが実態だ。

コンプライアンス意識も改善している

配送センター(画像:写真AC)
配送センター(画像:写真AC)

 コンプライアンス(法令順守)意識の欠如というのも、ブラックな職場の特徴かもしれない。

 その意味では、映画などで描かれるドライバーには「荒くれ者」のようなイメージがあり、運送業にブラックな印象を抱く一因となっているとも感じられる。しかしながら、一昔前はいざ知らず、これも現在の実態とは大きく異なる。

 近年、トラックの多くはデジタコやドラレコを装備しており、運行動態は常に監視状態に置かれている。

・急発進
・急加速
・速度超過

は、これらの機器によって自動で記録される。

 多くの運送会社は、デジタコ等が記録した危険運転のデータを基にドライバーごとの「安全運転度」の点数を計算するシステムを導入しており、ドライバーの勤務評価に利用している。

 さらに、運送業は法令によって安全教育を実施する義務があり、ほとんどの会社はドライバーを集めた安全会議を月次で実施している。この安全会議では、ドラレコで記録された危険運転の画像を教材とするのが定番で、実際の危険運転の事例を基に、ドライバー同士で討議をさせるような活動が実施されている。

 このような職場環境であるため、コンプライアンス意識が欠如したドライバーは(皆無ではないが)、以前のように見かけることは少なくなった。

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