「海のJRになりたい」 秋葉原の元パソコン少年が水上モビリティのスタートアップを立ち上げたワケ

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モビリティ分野のスタートアップ企業トップにインタビューするシリーズ企画。第2回目は、水上モビリティをロボティクスとAIで自律化することを目指す「エイトノット」の木村裕人代表取締役。

船舶関連事業者の課題

実証実験艇 ECO BOAT 20ft-1(画像:エイトノット)
実証実験艇 ECO BOAT 20ft-1(画像:エイトノット)

 現在、漁業者や旅客船など、すべての船舶関連事業はなにかしらの課題を抱えている。

 ひとつ目は「安全性」。国交省や内閣府の調査では、船舶関連の事故は自動車と比べて多いのが現状だ。これは自動車よりも船舶の技術が遅れているからで、

「テクノロジーがあったから事故を減らせるし、また救助もより安全な方法でできるようになるでしょう」

と木村は言う。

 ふたつ目の課題は「人材不足」だ。船に乗って仕事をすることは、想像しているよりもはるかに危険できつく、負荷が高い。そのために船員の全体数は減っている。また高齢化も著しく、いまや半数以上が50歳以上だと言われている。

 三つ目の課題は「収益」。収益が少ないために船舶は技術を高めるための資金を持てない。しかし、テクノロジーの力で安全なものにすれば、水上交通はより便利になり、利用者が増え収益化が望めると考えられる。

海とロボットと出会いが生んだエイトノット

実証実験艇 ECO BOAT 20ft-1(画像:エイトノット)
実証実験艇 ECO BOAT 20ft-1(画像:エイトノット)

 エイトノットの共同創業者のひとりである木村裕人は、父親がよく海外に行っていたこともあり、大学はアメリカに留学して卒業した。当時、西海岸のロサンゼルス近郊に住んでおり、海に行くことも多かったと言う。実際にボートなどに乗って浜から海に出てみると、その景色の違いに驚いたそうだ。

「とにかく感動しました。さらにダイビングで海中に潜ったりして、世界って広いんだなと考えたりもしました」

 このように海に親しんだ留学生活は、確実に木村と水上モビリティの距離を縮めた要素のひとつとなった。

 そんな木村だが、100%アウトドアな人間だったとは言えないかもしれない。中学生の頃には、秋葉原に行ってパーツを買い、自分でパソコンを組み立てるような少年だった。そうした少年にありがちな「二足歩行のロボットを好む」気持ちもまた持っていた。それが、現在手掛けるロボティクスによる船舶の自律航行につながっていると言える。

 木村は大学卒業後、日本に帰国して就職し、転職したデアゴスティーニ・ジャパンで、コミュニケーションロボット「ロビ」をはじめとするロボティクス事業の責任者を務めることとなった。

 そこでパートナー企業の開発担当者として出会ったのが、共同創業者で取締役CTOを務めている横山智彰(ともあき)だった。また、同じくロボット関連の企業で人事業務に携わっていたのが、現在エイトノットのバックオフィスを一手に担うサーフィン好きの堂谷香菜子だ。

 お互いの転職などで離れたこともあったが、3人とも海とロボットに縁があり、エイトノットの現在につながっている。創業にあたっては、3人で海に行ったり、バーベキューをしたりしながらの話し合いもした。「3人のチーム編成はうまく行きましたね」と木村は言う。

 こうして

・オンデマンド型水上交通で移動をもっと手軽に
・ロボティクス&AIによる安全で快適な航行
・ゼロエミッションで持続可能な輸送インフラを

のビジョンを掲げてエイトノットという船は、2021年3月に出航した。

 前述したひろしまサンドボックス「D-EGGS PROJECT」に採択されたのはそこからわずか数か月後のことだ。この速さの陰にはおそらく熱い思いが込められていた。

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