石川さゆりも真っ青? 伊豆縦貫道完成に立ちふさがる、「天城越え」という名の最難関ルート

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沼津市から下田市までを結ぶ伊豆縦貫道の建設計画。思うように工事が進まないワケとは。なぜ「天城越え」は難しいのか、解説する。

途切れ途切れの開通区間

伊豆縦貫道(画像:(C)Google)
伊豆縦貫道(画像:(C)Google)

 冒頭で紹介した通り、伊豆縦貫道は沼津市から下田市までを南北に結ぶ道路である。基本的に、国道414号に並行して建設される予定だ。

 現在の開通区間は、東名高速道路の沼津インターチェンジ(IC)と接続する沼津岡宮ICから三島市南部の大場・函南(だいば・かんなみ)ICまでの区間。開通区間はいったんそこで途切れて伊豆半島中部へと南下し、伊豆市の修善寺ジャンクションから同市の月ヶ瀬ICまでの区間で再び姿を現す。

 伊豆縦貫道の“本線”としてはこのような進捗(しんちょく)状況であるが、計画路線に並行する形で伊豆中央道と修善寺道路、および双方の道路と伊豆縦貫道本線を結ぶ各連絡道路が開通している。なお、前出の自動車専用道路とは、これらの区間を指している。伊豆縦貫道本線と接続する各自動車専用道路は、互いに設計速度や制限速度が異なるものの、実質的に沼津岡宮IC~月ヶ瀬ICまでは連続した自動車専用道路として運用されている状態だ。

 ただ、実質的に沼津市~伊豆市まで連続した自動車専用道路を形成していると解釈しても、計画全体の半分程度しか開通していない。ここまで紹介したさまざまな問題を考慮すると、残り半分の区間を1日でも早く開通させたいところだ。

 未開通区間において最も重要な区間は、国道414号の問題児「天城越え」に並行する区間だ。だが、その問題児は伊豆縦貫道にも牙をむく。その様子を、2021年3月に静岡県が公開した資料を踏まえながら検証してみよう。

やはりネックは「天城越え」

河津町の峰温泉大墳湯(画像:写真AC)
河津町の峰温泉大墳湯(画像:写真AC)

 伊豆縦貫道は従来の「天城越え」区間の大部分をトンネルで通過する予定だが、ここには河津町の温泉地へ源泉を供給する巨大な深層地下水の塊が眠っている。そのため、天城峠の下を真っすぐ貫くことができず、この塊を迂回して道路を建設しなければならない。建設時間短縮・費用削減双方の観点から、迂回は最小限にしたいところではあるが、深層地下水の塊の近傍にトンネルを建設すると、地盤が崩れて深層地下水があふれ出してくる可能性がある。

 そこで、伊豆縦貫道と深層地下水の塊の間に「遮断層」と呼ばれる地下水流出を防ぐ地層を挟み、この塊をさらに大きく迂回することとなった。結果として、天城越え区間である月ヶ瀬IC~河津IC(仮称)間の直線距離が約16.5kmであることに対し、当該区間の伊豆縦貫道の道のりは約20kmとなるため、建設箇所が増えることとなる。加えて、深層地下水の塊を迂回している箇所の大部分はトンネルであり、遮断層を挟んでいるとはいえ難工事が予想される。

 まさに天城越えは伊豆縦貫道における“最難関”の区間だ。だが、それと同時に“最重要”区間でもある。

 直線距離に対して少々迂回することにはなるが、それでも国道414号の天城越え区間を約2km短縮し、さらに設計速度80km/hの快適な道路が誕生するのだ。こうした天城越えの道路事情の進化が伊豆半島南部に与える影響は非常に大きく、前項で紹介した伊豆半島南部の問題点は解決するのだ。まさに伊豆縦貫道のキモだ。

 そうは言っても最難関。最重要ながら、現実的には最優先で進めることができない。そのため、天城越えよりも南側にあり「河津下田道路」と称される河津IC~下田IC(仮称)間の建設が先行して行われることとなる。その河津下田道路の中でも、河津IC~逆川IC(仮称)間が2022年度中に開通予定だ。

 このように、伊豆縦貫道は確実に歩みを進めている。そして、最重要・最難関である天城越え区間が開通するとき、伊豆半島は大きく生まれ変わることだろう。筆者(赤羽良男、交通ライター)はそんな輝かしい日を想像している。