自民提出案「スーパーはくと」問題だけじゃない! 鳥取県の鉄道利用「奨励金」は本当に効果があるのか

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鳥取県で交通施策を巡る論議が湧いている。問題はどこにあるのか。

地元民が支えるローカル鉄道も

若桜鉄道(画像:若桜鉄道)
若桜鉄道(画像:若桜鉄道)

 結局、この県民運動に路線維持のための効果があるとは想像し難い。わずかな金額の支出よりも重要なのは

「路線を廃止することなく維持したい」

という、地元住民の強い意志のはず。それを鳥取県は既に理解しているはずだ。

 なぜなら、鳥取県には地元住民の熱意によって廃止を逃れ、第三セクターとして存続している若桜鉄道があるからだ。

 若桜鉄道は、1930(昭和5)年に若桜線として開通した。本来は山陰本線のバイパス線として計画されたが、計画は進展せずに盲腸線(短い支線)となった。鳥取県八頭町から若桜町を結んでいる(営業キロ19.2km)。

 1981年には第1次廃止対象特定地方交通線とされ、廃止待ったナシとなったが、地元で

「乗って残そう若桜線」

の運動が盛り上がり、1987年に第三セクターとして存続することになった。

 とはいえ、路線が走る沿線の八頭町の人口は約1万6000人。若桜町にいたっては3000人を割り込んでおり、今後を考えると経営は厳しい。そのため、経営改善をもくろみ

・観光列車の投入
・沿線の観光地整備

によって維持が図られている。

 第三セクターへの以降を経て、地元では「若桜鉄道協力会」が立ち上げられて利用促進活動を行うなど、地元の存続に向けた熱意は高い。行政主導だけではないのだ。若桜鉄道の事例は、路線の維持に本来の利用者である沿線住民の声が最も重要であることを教えてくれる。

 路線を維持したいなら、地元民が鉄道を利用しやすくなるポイントを論点に洗い出さなければならないのだ。