自民提出案「スーパーはくと」問題だけじゃない! 鳥取県の鉄道利用「奨励金」は本当に効果があるのか

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鳥取県で交通施策を巡る論議が湧いている。問題はどこにあるのか。

予算300万円ぽっきりの「県民運動」

因美線(画像:写真AC)
因美線(画像:写真AC)

 そんななか、鳥取県が新たに打ち出したのが、通勤手段をマイカーから電車・バスへ転換した企業・団体に奨励金を支給する施策だ。

 JR西日本が公表した収支は、

・山陰本線の鳥取~浜坂間:8億5000万円
・因美線の智頭~東津山間:3億9000万円

の赤字だった(ともに2017~2019年度の平均)。そのほかの路線でも、利用者は決して多くない状況が続いている。

 JR西日本が赤字路線の収支を公表したのは、沿線自治体に廃線やバス転換の協議入りを促す狙いがある。こうした動きに対して鳥取県の平井伸治知事は、廃線前提の協議を拒否している。そこで新たな計画として生まれたのが、今回の奨励金支給施策というわけだ。

「県民運動」

として展開されるこの施策は、参加する企業・団体が、通勤や出張で公共交通機関の利用拡大に努める宣言を行い、協議会から認定を受けるというものだ。

 その上で事業所内で利用拡大の運動を実施し、認定日から3か月後をめどに実績を報告、公共交通機関の利用増につながったと認められれば、奨励金が支給される仕組みだ。奨励金は一企業・団体あたり10万円。当面、30件分300万円の予算が確保されている。

鳥取県は超「車社会」

鳥取市が運営する移住促進ウェブサイト「とっとりコネクト」(画像:鳥取市)
鳥取市が運営する移住促進ウェブサイト「とっとりコネクト」(画像:鳥取市)

 鳥取県は、車社会を前提として成立している。例えば、鳥取市が運営する移住促進ウェブサイト「とっとりコネクト」には、こんな記述がある。

「鳥取市は都会のように電車や地下鉄は発達していません。もちろん、鉄道、バスなど公共交通機関はありますが、都会のように縦横無尽に走ってはいませんし本数も限られているので、子供や高齢者を除く大人の移動手段はマイカーとなります。鳥取県の自動車の普及率は93%で軽自動車の普及率は全国1位。世帯当たり100%を超えていることから、一人一台といっても過言ではないほどなのです」

 行政自らが言葉を選びながら、鉄道・バスの利便性は高くないことを記している。実際、県庁所在地である鳥取市の場合でも、中心駅であるJR鳥取駅周辺にイオンはあるものの、にぎわいの中心は駅から離れたロードサイドに移っている。

 車と道路を中心に成り立っているそんな地域で「10万円を払うから電車・バスで通勤しよう」は、かなり無理のある計画なのだ。

 また、JR西日本が収支を公表した区間は、いずれも県境を越える区間で、移動人口はそもそも多くない。県民運動を行っても効果は限定的なのだ。