再評価が進む「路面電車」 開業が最も期待できる都市とは? ふさわしい都市規模も検証する

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路面電車が「都市の公共交通」として見直されている。いったいなぜか。

路面電車にふさわしい都市規模とは

岡山電気軌道(画像:写真AC)
岡山電気軌道(画像:写真AC)

 都市交通としての路面電車は、東京都内ではもはや無理だ。東京都内には多くの自動車が走り、利用者も非常に多いということで、路面電車はなくなっていった。

 都電荒川線(東京さくらトラム)は、専用軌道で都心部ではないということで残された。都心部の路線は地下鉄に置き換えられ、補完するかのように都営バス網が充実するようになった。

 路面電車で知られる都市をいくつかピックアップしてみよう。例えば、広島県広島市である。この市は政令指定都市であり、人口は120万人程度だ。広島電鉄は8系統の路線を運行している。

 政令指定都市で路面電車があるところはほかにもある。岡山県岡山市だ。岡山市の人口はおよそ72万人。岡山電気軌道は2路線の運行である。

 一方、政令指定都市に満たない規模の都市でも路面電車は運行されている。長崎県長崎市は、人口40万人程度だ。長崎市には長崎電気軌道があり、ふだんは4系統が運行されている。

 また四国最大の都市・愛媛県松山市は、人口50万人を超えている。地域の鉄道を運行する伊予鉄道は、列車の路線だけではなく路面電車の松山市内線を運営しており、一般向けの路面電車は5系統が存在する。

 そして鉄軌道王国の中心地・富山県富山市だ。路面電車を中心とする街づくりをする富山市は、人口は41万人程度であり、6系統の路線がある。

 人口が30万人以上の都市で、ある程度中心部に集約している都市では、路面電車が必要な交通機関として存在できることになる。ただ、何百万人もいるような都市では、むしろ地下鉄のほうが優位となる。

路面電車が期待できる都市はどこか

金沢駅周辺の様子(画像:写真AC)
金沢駅周辺の様子(画像:写真AC)

 最後に、路面電車が期待できる都市はどこか、ということを考えてみたい。

 ありそうでないのが、石川県の金沢市だ。金沢市は人口46万人を超え、コロナ禍前は多くの人が観光客として押し寄せており、路面電車があってもおかしくはないという都市である。

 金沢市には、北陸鉄道が金沢市内線という路線を運行していたものの、狭い道路に自動車も路面電車も走ることになり、道路の混雑が激化して遅れが常態化、1967(昭和42)年に廃止となった。現在、金沢市ではLRTもしくはバス高速輸送システム(BRT)の導入が検討されている。

 道路を拡張し、路面電車を中心とする公共交通網を整備しておけばと思われたものの、1960年代には路面電車は時代遅れの乗り物とされており、廃止はやむを得なかったのかもしれない。

 ある程度の規模の都市なら、バスを多く走らせるよりも、路面電車を中心に街づくりを行うというのが適切である。そういう意味で路面電車は再評価され、宇都宮市などには新しくLRTができることになったのだ。

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