予算は約200億円! スマート化が進む、知られざる台湾「交通事情」をご存じか

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台湾の交通部は2017年から、スマート運輸計画に37億2800万台湾元の予算を投じている。

スマート交通構築に200億円以上を投資

台北の街並み(画像:写真AC)
台北の街並み(画像:写真AC)

 台湾の交通部は2017年から37億2800万台湾元(約196億9145万円)の予算を投じて、「スマート運輸計画2017-2022年」を実施している。計画に含まれているのは、運輸回廊渋滞改善、地方交通の改善、交通安全の向上、コネクテッドカー(V2X)技術の発展応用などだ。

 過去4年で、

・移動手段をサービスとして提供するMaaS
・地方公共交通統合プラットホーム
・スマート化による運輸回廊渋滞改善
・統合型運行管理システム
・自動運転車やバイクのネットワークへの接続

などを進めてきた。

 交通部は2021年、これまでの成果とV2X技術の強化に向け、スマート交通に必要なインフラ建設のために「スマート運輸計画2021-2024年」を策定。46億1600万元(約210億3877万円)を投じる計画だ。

 中央政府の部会、地方政府、IT企業や交通、観光業など各業界の努力が実り、台湾は2022年、世界最大のスマート交通、輸送デジタル化の展示会「ITSワールドコングレス2026」の開催権を獲得することを目指し、スマート運輸ソリューションを海外に輸出することを狙っている。

交通スマート化、認知度はすべて5割以上

台北の街並み(画像:pixabay)
台北の街並み(画像:pixabay)

 交通部と台湾経済誌が合同で行った調査によると、政府がこれまでに行ってきたスマート交通関連施策の認知度は高い順に、

・自動料金収受システム(ETC):96.96%
・イージーカード(台湾で使える交通系ICカード):94.64%
・バスの現在位置情報:89.17%

となっており、生活に浸透していることがわかった。

 一方、高速道路の状況をリアルタイムで表示する電子看板や自動運転車/無人運転車などは73.69%、55.42%にとどまり、認知度のさらなる向上が求められる結果となった。

 しかし、一定の認知度があるとも言え、将来的なスマート交通の普及に向けた素地(そじ)はできているとも受け取れる。

市民が望むのは「公共交通機関の強化・改善」

政府のスマート交通施策で改善必要項目。複数選択(画像:ワイズコンサルティング)
政府のスマート交通施策で改善必要項目。複数選択(画像:ワイズコンサルティング)

 同調査で「政府のスマート交通施策で改善が必要」に挙げられたのは、公共交通サービスの強化が72.1%と最多だった。このほか、

・高速道路の渋滞:64.7%
・地方交通の不便なこと:59.1%
・新テクノロジーの導入スピード:56.3%
・交通事故の発生減少:49.9%

と続き、ほぼ5割以上の結果となったことから、これらのテーマがスマート交通で求められる内容だと言える。

 交通部の統計によると、公共交通機関の使用割合はわずか16%にとどまった。全利用回数のべ800万回中、600万回は北部に集中しており、依然として発展の余地が大きいと言える。

 自動車用部品大手の車王電子(Mobiletron)はこの結果について、

「現行サービスでは改善余地があるという意味だ」

と指摘。車王電子は傘下の電動商用車大手・華徳動能科技(RAC Electric Vehicles)と提携し、電気車両を開発していると述べた。華徳動能科技が電気自動車(EV)の開発、車王がシステム統合を行う。さらに、必要に応じて移動診療車や電動バスを開発する計画もある。

 また、高速道路の渋滞については2021年末から新竹科学工業園区(新竹サイエンスパーク)周辺で「スマート運輸回廊渋滞改善計画」を実施している。過去の交通量を季節ごと、平日・休日、天候ごとに分類したビッグデータを人工知能(AI)で解析し、動的に交通標信号をコントロールするシステムを開発した。交通状況に応じてAIが信号の表示タイミングを調整することで、20~30分の通勤時間短縮に成功している。

 また、週末や連休などに渋滞しやすい区間にも応用されており、警察官が信号を操作する回数が減少したほか、リバーシブルレーン(渋滞緩和のために時間帯によってセンターラインを変更する車線のこと、可逆車線)の設定を交通需要に合わせて適切に変更できるようになったため、自動車の流れをよどみにくくするなどの成果を挙げている。

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