「電力不足なのにEV増やすな」がどう見ても暴論すぎるワケ
メリット3:扱いやすさ

エンジン車とEVの運転感覚の違いとして、アクセルレスポンスの良さが挙げられる。エンジン車の場合はEVと比べてエンジンや変速機などの機械的な部品が多く、ごく一部の高級車を除き、アクセルを踏んでから加速するまで多少のタイムラグが発生する。
一方で、EVは電気信号による制御でモーターの出力を上げるだけで加速するため、アクセルを踏んだ瞬間に、踏んだ分だけの加速が得られる。これは特にストップ&ゴーを繰り返す都市部や、瞬間的な加速が必要になる高速道路の合流などにおいて有利となる。
例えば軽自動車のEVである日産サクラ・三菱eKクロスEVは0km/hから最大トルクの195Nmを発揮するが、これは2.4Lクラスのエンジンの最大トルクに匹敵する。もちろんエンジンではないので、どんなにアクセルを踏み込んでもエンジンがうなることはない。
さらに減速についても、多くのEVでアクセルを離すだけで回生ブレーキにより減速する「ワンペダル」モードが用意されている。人によっては慣れるまで少し時間がかかるかもしれないが、慣れてしまえば街なかではアクセルとブレーキの踏み換えをせずに運転可能となる。
EVは電力不足に拍車をかける?

2022年6月、梅雨明け直後の首都圏を猛暑が襲い、全国初の「電力需給ひっ迫注意報」が発令された。これに伴い一部で
「電力不足なのにEVを増やすなどけしからん」
という声が聞こえたが、EVが電力不足に拍車をかけると決めつけるのは早計だ。
多くのEVは、需要が少なく電気料金が安い夜間に充電しており、需給がひっ迫する時間帯での充電は長距離移動などの継ぎ足し充電に限られる。これは国交省が2012(平成24)年に発表した実態調査でも裏付けられているが、現在は搭載する電池容量が増えており、昼間の継ぎ足し充電はさらに減少していると思われる。
ちなみに次世代自動車振興センターの統計によると2020年時点でのEV保有台数は約28万台とされており、仮に年間走行距離を平均1万2000kmとした場合、消費電力は合計で約480GWh(7km/kWh換算)となる。2020年の国内の電力消費量は905TWhなので、全体に占める割合は(大部分を占める夜間の充電量を含めても)わずか0.05%だ(1TWh = 1,000GWh、1GWh = 1,000,000kWh(1,000MWh))。