「意識高い」からじゃない! 新しい働き方「ワーケーション」が全然普及しないワケ

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近年、その名を知られるようになった「ワーケーション」。しかしメリットばかりではない。いったい何を解決すれば普及するのだろうか。

地方自治体による誘致合戦、公共交通機関セットのプランも登場

ワーケーションとプレジャーの実施形態イメージ(画像:観光庁)
ワーケーションとプレジャーの実施形態イメージ(画像:観光庁)

 日本テレワーク協会によると、ワーケーションは、

・地域ではたらくワーケーション
・地域移転促進のワーケーション
・移住・定住促進のワーケーション
・休暇取得促進のワーケーション

の四つに大きく分類されるという。

 企業・団体等のくくりでは、先のふたつが該当する。ビジネス的側面としては、例えば

・企業合宿
・オフィス移転
・地域での従業員採用

などだ。観光庁も、ワーケーションとプレジャーの実施形態を公表している。

 以前はそれぞれの地方自治体が、企業合宿や地方移住などの誘致を目指していた。2019年11月18日、全国65の自治体が参加して「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」が設立された。主な目的は、地方でのワーケーションを共同でアピールしたり、情報交換会を行ったりすることなど。2022年3月現在、約3倍の203の自治体が参加する。

 旅行会社やホテルなども、新たな旅行ビジネスとして注目している。JR東海では2021年4月、東海道新幹線が乗り放題となるワーケーションプランを発売した。プランは「グリーン席」「普通車指定席」の2種類で、期間は6泊7日、13泊14日、20泊21日のいずれかでホテル宿泊付き。販売価格は、ひとり1室10万5000円からだった。

 また、ANAも、航空券とホテル・旅館、さらにマイルもたまる北海道や沖縄などのプランを今も提供中。地域体験プログラム付きプランとして、鹿児島県・屋久島でトレッキングや川カヌーなどが体験できるセットもある。

ワーケーションのメリット

「新たな旅のスタイル」実態調査でのワーケーション導入に関する課題(画像:観光庁)
「新たな旅のスタイル」実態調査でのワーケーション導入に関する課題(画像:観光庁)

 新型コロナウイルス禍によって、テレワークが急速に普及した日本。政府は2022年7月、観光戦略実行推進会議において、ワーケーションを「新たな旅のスタイル」とする政府方針を示した。

 観光庁が公表した実態調査報告書では、ワーケーションのメリットとして

・心身のリフレッシュによる仕事の品質と効率の向上
・多様な働き環境の提供

などが挙げられた。

 滞在先では、地元で消費行動が生じることでの経済振興、関係人口の増加、観光需要の増加などが期待された。

ワーケーションのデメリット

「新たな旅のスタイル」実態調査での年代別のワーケーションへの関心(画像:観光庁)
「新たな旅のスタイル」実態調査での年代別のワーケーションへの関心(画像:観光庁)

 だが、就業規則などでワーケーションについて定める企業はわずか

「0.4%」

のみ。

 その課題として「ワークと休暇の区切りが難しい」「情報漏えいの可能性がある」といった意見から、「社内で不公平感が生じる」「給与計算が難しい」「経営者や役員の理解や支持が得られない」など、古くから変わらない日本社会ならではと思える側面も。

 また「どこまで経費として認められるか」「労災適用の判断が難しい」などの問題も出た。

 さらに、年代別のワーケーションへの関心を見ると、年代が上がるほど興味が低下する。年功序列が根強く残る日本社会。若い層が率先してワーケーションを取ることが難しい、といった事情もありそうだ。

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