なぜMaaSは「実証実験レベル」で終わってしまうのか? 繰り返される失敗、理想的なモビリティサービスの在り方とは
都市型/地方型それぞれの移動課題
ここからは、都市部/地方部それぞれにおける移動課題と、今後のモビリティサービスの在り方について考えていきたい。
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公共交通が普及している都市部においては、都市一極集中による日常的な公共交通のラッシュや、テレワークの拡大や三密を避けた移動手段の確保など、移動ニーズの多様化が進んでいる。
そんななか、今後求められる方向性は、「高付加価値化」がひとつのキーワードとなる。例えば、マルチモーダルでのサブスクリプションのような新しいサービス・料金体系や、移動先でのアクティビティとの連動など、移動の高付加価値化をテーマとした新しいサービスへの期待が強い。
その一方、地方部は自家用車分担率が非常に高く、運転免許を持たずとも移動/生活ができるインフラ構築が急務となっており、そのなかでも
「効率化」
はひとつのキーワードである。
公共交通インフラに対する課題が大きい地方では、欧州版MaaSのように、利便性と収益性のバランスをとるためのMaaSが求められるため、効率化・持続可能性をテーマにしたサービス構築がポイントとなる。
実際、早朝や夕方などのラッシュアワーは工業団地の従業員向けの通勤シャトル、日中は市民向けのオンデマンド交通として、車両の稼働率をマルチユース(複数の用途)で底上げするなどの新たな取り組みも始まっている。
ここで書いた内容は、平均的な都市部/地方部の移動に関しているが、実際、各エリアにおける実情は異なるだろう。地域の人々の困りごとは何なのか、まだ顕在化していない事業ニーズはどこにあるのかなど、地域ごとにリサーチを行うことが必要だ。
実際に当社(リブ・コンサルティング)で行った、過疎地域の移動課題に関する調査では、公共交通の不便さや交通空白地の増加など、既に顕在化している課題も大きかったが、本質的に着目すべきニーズは、
「そもそも移動したい目的地/コトがない」
という声だった。
仮に、そのような視点を持たずに公共交通インフラだけを整えたとしても、「そもそも移動したい」と思える目的がなければ、空気を乗せて走るコミュニティーバスが増えるだけだ。