自動車だけじゃない! 鉄道にも「ハイブリッド車両」が普及し始めている身も蓋もない事情

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ハイブリッドが近年、鉄道分野にも展開されている。その背景にはいったい何があるのか。

鉄道会社が取り組む地球環境保護活動

SDGsのロゴと開発目標(画像:国連広報センター)
SDGsのロゴと開発目標(画像:国連広報センター)

 地球環境問題は、鉄道業界でも取り沙汰されている。一見すると、鉄道業界は地球環境に優しく見える。

 例えば、JR西日本管内の2021年における電化率は63.2%だ。このように電化路線の割合が多い傾向にあるため、走行中に温室効果ガスを排出しない電車が目立ち、

「鉄道 = 電車 = 地球環境に優しい」

というイメージが定着しているのだ。

 ただ、前出のデータの裏を返せば、JR西日本管内では3割超の区間において非電化となっており、当該区間では温室効果ガスを排出する気動車が走っている。そのため、鉄道業界も決して地球環境問題と無縁ではないのだ。この問題を解決するため、従来の気動車よりもエネルギー効率を向上させ、温室効果ガスの排出を抑制できる車両を導入する必要が出てきた。

 地球環境問題の解決に対して最も効果的な手段を選ぶなら、当該区間を電化して電車を走らせれば良いが、そう単純ではない。

 そもそも、

「電化できるなら早々に電化している」

というのが鉄道会社の言い分であろう。

 それが実現していないのは、

・電化工事
・新型電車の製造

に必要な膨大な出費に対して、当該区間の収益が全く足りていないからだ。そう、非電化区間の大半は、いわゆる赤字のローカル線なのだ。

 そうは言っても社会全体から見れば、それは鉄道会社の個社的な事情だ。長年問題視されている地球環境問題、さらに近年の世界的なトレンドであるSDGs(持続可能な開発目標)の視点から捉えると、

「自分勝手な企業」

というレッテルを貼られ、企業価値が下がっても不思議ではない。

 こうした個社の事情と世間の事情の折衷案として導入されたのが、HV車両だ。非電化区間を電化する設備投資費用はかけられないものの、従来の気動車よりもエネルギー効率を向上させて地球環境に配慮する――。

 HV車両の導入は、鉄道会社が取り組みやすい地球環境保護活動だと言えるだろう。

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