函館市電は延伸・拡大すべきか? 市内を覆うコロナ疲弊のベール、7月「レトロ観光列車」再開で考える

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観光客から人気の「箱館ハイカラ號」が7月9日から運行を再開した。函館市の観光業に力を取り戻せるか。

提案された路線拡大・延伸案

路面電車が再評価される機運を生み出した富山ライトレール(画像:小川裕夫)
路面電車が再評価される機運を生み出した富山ライトレール(画像:小川裕夫)

 しかし、2006(平成18)年にJR西日本の富山港線が次世代型路面電車(LRT)へと転換。これが潮目を変えるターニングポイントとなる。

 新たに路面電車として生まれ変わった富山港線は、バリアフリー化や定時運行性、環境にやさしいといった面が評価され、路面電車の再興という機運を生み出した。路面電車により、市街地活性化という副次的な期待も行政関係者や地元財界からも寄せられる。

 富山から起きた路面電車を再評価する動きを受け、函館でも行政・地元財界・市民の間から路面電車の活性化を模索する動きが始まる。

 函館市では、市電の廃止路線を復活させる案や路線を延伸・拡大する案が提案された。その中で地域活性化に有力とされたのが、五稜郭電停付近から分岐して大型商業施設が集積する地区へと向かうルート。それに、終点の湯の川電停が函館空港まで約3kmと至近にあることに着目し、湯の川から函館空港まで路線を延伸させるルートの2案だった。

 これらの延伸・拡大案は現段階で実現していない。それどころか北海道新幹線の札幌延伸を控え、北海道内ではJR路線の存廃議論がやかましくなっている。JRと函館市電は所管が異なるものの、函館市電を延伸・拡大などの議論ができるタイミングではない。

 それでも既存の設備などを使って沿線や観光の機運を盛り上げようという動きが出てきたことで、再び函館市電に光が当たることになる。箱館ハイカラ號が運行を再開しても函館市の経済や観光産業への効果は極めて限定的だが、それは初めの一歩にすぎない。

 北海道の観光産業は、4月に起きた知床観光船沈没事故で大打撃を受けた。この沈んだムードを打破するためにも、小さくてもいいから前向きなトピックスを積み重ねたいことだろう。

 再び感染者数が増え始めたコロナ第7波にも警戒しなければならないが、間もなく夏休みに入り、北海道の観光業は書き入れ時を迎える。それだけに、箱館ハイカラ號の運行再開は福音でもある。これをきっかけに、函館市の観光業ひいては北海道全体に元気が戻ることを期待したい。

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