函館市電は延伸・拡大すべきか? 市内を覆うコロナ疲弊のベール、7月「レトロ観光列車」再開で考える
市営バスを捨てた函館市

函館市は道南の拠点として栄えてきたが、主要産業でもあった水産業の衰退とともに経済は停滞。それに伴って、人口も減少傾向にある。函館経済の停滞は、函館という都市の盛衰にも影響を及ぼす。
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その巻き返し策として、函館市は観光業の振興にも力を入れる。観光の起爆剤になるとして、2016年に一部区間が開業した北海道新幹線にも期待を寄せていた。北海道新幹線が一部開業したことで、函館市は開業前から青森県・岩手県・秋田県などの北東北3県とも連携。観光需要の喚起に努めた。
他方、北海道新幹線の新駅は、計画段階から函館市内ではなく北隣の北斗市に設置されることが決まっていた。それは仕方ないことだとしても、函館市は駅名に函館を冠することを主張。
北斗市が新駅名に函館をつけることに難色を示したため、北海道新幹線の新駅名でひともんちゃく起こることになった。最終的に、新駅名は新函館北斗駅という折衷案で決着した。
前述したように水産業で栄えた函館市は、観光業という新たな産業で経済活性化に取り組む。しかし、旧市街地とも言える函館市電の沿線から重心は郊外へと移り、市電の沿線はにぎわいを失った。
どこの地方都市にも言えることだが、平成期の地方都市は市街地の空洞化に悩まされた。函館市でもロードサイド化は顕著に進んでおり、駅周辺よりも幹線道路に沿って大資本のチェーン店が多く出店。幹線道路沿いににぎわいが生まれている。
函館市電は既存の市街地に路線が敷設されていたこともあり、沿線の衰退は同時に利用者の減少にもつながった。利用者が減少すれば、路線の廃止議論も浮上する。利用者減という危機に直面し、函館市は経営体質を改善するために2003(平成15)年に市営バス事業を民間へ譲渡。市電を残すという選択をした。
市電を残したものの、日本全国で運行されている路面電車の経営は決して明るいとは言えず、それは函館市電も変わらない。歳月とともに廃止・縮小されているから、函館市電も同じ運命をたどるという見方が強い。