交通系ICカードを超えるか? いま注目のクレカ「タッチ決済」、熊本市電の実証実験で考える
世界500の公共交通機関で導入

熊本市交通局のプレスリリースによると、Visaのタッチ決済は
「公共交通機関では、既に世界500の公共交通機関で導入、国内においても多くのプロジェクトが進行中で、幅広いシーンで拡大」
とあるが、実態はどうだろうか。いくつかの国と地域の状況を見てみよう。
イギリスのロンドンは、早くからクレジットカード決済を導入している。2003年にはオイスターカードと呼ばれるプリペイドカードが導入され普及していたが、2012年にロンドン市内の公共バスで、クレジットカードでの乗降が可能になったことをきっかけに普及が進んだ。現在では、地下鉄やタクシーでも同様のシステムが導入されている。
プリペイドカードのような専用カードが普及していたにもかかわらず、転換が進んだのは、日常生活でクレジットカードやデビットカードが普及しており、現金に代わる決済手段として広く使われていたためだ。乗客にとっては、チャージの手間が必要なオイスターカードより、日常使いされているクレジットカードの方が利便性が高かったのである。
香港では1997年から大量高速鉄道(MRT)で、専用カードのオクトパスカードが使われていた。クレジットカードなどが使われるようになったのは、2018年から。
香港の特徴は従来のオクトパスカード、クレジットカード、デビットカードにとどまらない決済手段の多さにある。Apple PayやGoogle Pay、Samsung Payも使える。さらに、中国本土ではQRコード決済が普及していることから、こちらの対応も進んだ。
「手持ちの決済手段で乗車できる」
という点では、香港が最も先進的だ。
中国でQRコード決済が減少しているワケ

中国本土はQRコード決済がとても進んでおり、現金で買い物をする人はほぼいない。街の露店のようなところでも、決済はほぼAlipayかWeChat Payだ。北京では2018年、地下鉄でQRコード決済での乗降が可能になり普及は進んだ。しかし、現在は利用者は減少しているとの指摘もある。
その理由は、
・QRコードの読み取りに時間がかかった
・人の多い場所で通信がもたついた
ため、改札前の渋滞を生み出したためとされている。ただ、これは中国でよく見る光景だ。
そこで、新たに注目されているのが近距離無線通信(NFC)決済である。スマートフォンのアプリを使って決済する方法で、モバイルSuicaのように上海交通カードのアプリ版がある。ただ、実際に改札を通るとき、わざわざアプリを開いて、QRコードを出さなければならないため、時間と手間がかかる。
一部の都市の交通系アプリはワンタッチ決済かと思いきや、アプリを開いてQRコードを表示。決済はAlipayかWeChat Pay。なぜ、そんなシステムになっているか不思議だ。