空港「保安検査場」に忍び寄る危機 理不尽クレーマーにたじろぐ現場、早急改善で離職防げ

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あまりにも報われない空港の保安検査業務。その実態とは。

理不尽な環境でモチベーション下がる現場

保安検査場(画像:写真AC)
保安検査場(画像:写真AC)

 これに加え、コロナ前まで、保安検査で取り扱う荷物の数は激増していた。

 LCCの普及によって、機内持ち込みの手荷物が増えたことが大きい。また、JAL・ANAの利用客もできるだけ荷物を機内に持ち込もうとする。その方が、到着してからすぐに移動できるからだ。

 ビジネスパーソンは荷物の紛失リスクを恐れて、それ以前から荷物を預けないのが通例となっている。荷物ケースを製造する会社も、航空機の機内に持ち込める最大のサイズに合わせた製品を作っている。その結果、検査業務は大型化した荷物ケースを相手にしなければならず、検査員の労力は増す一方なのだ。

 保安検査に当たる若い人たちは、空港で働きたいという気持ちを持ってこの世界に入って来る。しかし実際の現場では、理不尽な環境にさらされ、モチベーションを低下させている。

 給与額で報われるのならまだしも、航空会社の経営はコロナ禍で圧迫されているため、保安業務のような本業以外のところにかかる出費を増やそうというインセンティブは働かない。こうして保安検査員の離職率は高くなり、人手も足りず、現場での重要な経験知が蓄積されない深刻な事態に陥っている。

 今後、航空利用が復活すれば、保安検査の重要性もそれにともない増していく。テロなどは、起こってからでは遅いのだ。現在、国土交通省の委員会では、この問題について真剣に議論を進めている。この文章を読んでいる皆さんも、飛行機を利用する際には、改めて保安検査場で働く人たちの労をねぎらってほしい。

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