酷暑なのにバスの「窓開け対策」必要? いすゞが編み出したスゴイ「車内換気術」とは
「エアロゾル」拡散抑止の方法とは
エアロゾルとは飛沫(ひまつ)よりさらに細かい5マイクロmm(0.005mm)未満の粒子のことで、マスクのすき間などから漏れ出て空気中を漂うことにより感染が広がるとされている。
いすゞは路線バス内での可視化シミュレーションを通じて、大きな飛沫は重力に伴って足元に沈殿し、粒子の細かいものは天井付近に漂いながら車室内に広がる点に着目した。
もともと路線バスは、ドアの開閉や人数の乗り降りが都度発生することから、クーラーのブロアは車両容積に対して大容量のものが天井付近に搭載されている。
この空気取り込み口に、専用開発したエアロゾルフィルターを装着することで、粒子がフィルターに補集され室内への拡散を抑える形という仕組みだ。
実際に実験を行ったところ、時速20kmで窓開け換気をしている場合と、窓を閉めてエアロゾルフィルター装着状態でエアコンをしている場合とを比較すると、車室内の空気の換気回数は同等の結果が得られるとし、無理な窓開け換気をしなくてもよいという結果となっている。
いすゞ担当者は
「窓開けの換気を実施していると、空気循環の乱れが発生し、エアコンの効率なども落ちてしまい、乗客や運転手にも負担を掛けることになる。また都市部の状況によっては、必ずしも窓開け換気を推奨できる場合ではないこともある」
「そのため、路線バスがもともと持っている大容量の空調換気技術をベースに、今回の開発にいち早く取り組んだ」
「いすゞ『エルガ』にエアロゾルフィルターのオプションが追加設定されたのは2021年4月。急ピッチで開発を進めたことで、約1年という期間で採用されるに至っている。現在は路線バスだけでなく、順次ほかの車両でも適用できるよう実証を進めている」
と話していた。
このエアロゾルフィルターが搭載されている路線バスは、すでに街中を走り始めている。また、採用までに納車されたエルガに関しても、後付けでオプション装着可能な構造になっているという。